春はフライドポテト。新ジャガを食すのにちょうどいい。
夏はフライドポテト。塩分補給のために食べた方がいい。
秋はフライドポテト。旬のジャガイモのベストな食べ方。
冬はフライドポテト。食べれば体も心もホカホカします。

どの季節でも時候の挨拶に使えるフライドポテトは素晴らしいですね。
ニコリスタッフの(焼)です。

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番外編

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前回までのあらすじ
密男とライオンのレースは一進一退の様相を呈していた。
密男の仕掛けた罠により、遅れを取ったライオンだが…。
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ライオンは密男を追いかけた。

密男の仕掛けた狡猾な罠により、ライオンと密男との距離はさらに広がっていたが
それでもあきらめずに追いかけ続けた。

息を切らしながら走るライオンの脳裏に、10年前の記憶がよみがえる。

ライオンが小学校に通っていた頃の記憶だ。

人間たちが通う学校に「人間並みの知能を持ったライオン」として、世界で初めて編入した。

知能はあるものの、このときはまだ人間の言葉を話すことはできなかったライオンはクラスで孤立していた。

唯一、活躍できたのは体育のかけっこのときだ。
足の速さではクラスでいちばんだった。
当時、同じクラスにいた密男にも勝った。

クラスメートたちがうわさをしている。
「…今まで学校でいちばん足の速かった、密男に勝っちゃったぜ」
「…でもさ、ライオンなんだから当然じゃない?」
「…そうだよな。人間なのにあれだけ速い密男のほうがすごいよな」

ライオンは、人間の言葉を話すことはできなかったが言っていることは理解できた。
クラスメートのひそひそ話も聞こえてしまう、自身のバツグンの聴力をライオンはのろっていた。

密男がやたら大きな声で話しかけてきたのは、そんなときだった。
「ライオン、すげぇな! めちゃくちゃ速いもんな!
見てろよ! 絶対追い抜かしてやるからな!」

それ以来、休み時間や放課後に、ライオンと密男はよくかけっこをした。
いつもライオンが勝つのだが、密男はあきらめずに追いかけてくる。

その距離はだんだんと縮まって………………、ある日密男がライオンを抜かした。

ライオンはかけっこには負けたが、密男の勝利を自分のことのように喜んだ。

ライオンにとって密男は初めてできた友だちで、この友情はずっと続くと思っていた。

あの事件が起こるまでは…。

ライオンを追い抜かした、密男の足の速さはまたたく間に世界中に広まった。
そして、とある組織が密男の速さの秘密を探るため密男をさらった。
密男はその足の速さを活かし、組織の施設から抜け出したが、人体実験を繰り返された密男はすべての記憶を失っていた。

ライオンは思った。
「もしもオレが、いっしょにかけっこの練習をせず、密男の足が速くなっていなかったら、密男がひどい目に遭うことはなかったのではないか…」
そして、ライオンは誓った。
「オレが組織から密男を守り、密男の楽しかったころの記憶を思い出させてやる!」

記憶を失った密男は、ライオンから逃げ続けた。
当然だ。ライオンに追いかけられれば誰でもこわい。
それでもライオンは密男を追いかけ続けた。
「もし密男に追いつくことができたら、密男の記憶が戻るのではないか」という淡い期待を抱きながら。

そして、密男を越える速さを手に入れた。
「…つもりだったんだけどなぁ…ガオ」
前を転がる密男を見つめながら、ライオンはなぜか笑っていた。

「最後まで…あきらめないガオ…!」
そうつぶやいて、ライオンはラストスパートをかけた。

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一方、密男は勝利を確信していた。

この勝負の条件は
「母屋の中に入り、かぎをかけることができたら密男の勝利。それよりも前にライオンが密男に触れたらライオンの勝利」
というもの。
正面扉から母屋に入り、かぎをかける時間まで含めて考えても、ライオンとの距離は十分に離れている。

ライオンのラストスパートは恐ろしいスピードであったが、密男の回転移動も引けを取らない速さだった。

差は縮まらないまま、密男はついに扉にたどり着き、素早く立ち上がると扉を締めてかぎを閉めた!

「やっ…」
やった、と快哉を叫ぼうとした密男であったが言葉が詰まった。
背中に何かが触れている感覚があったのだ。

おそるおそる振り返ると、そこにはライオンの姿があった。

「なっ、なぜだ! さっきまでライオンは間違いなくオラの後ろにいたはずだ!
扉を閉めるときも入ってこないことをこの目で確認している!
それに、この母屋の他の出入り口はすべてかぎをかけているはずだ!」

ライオンは不敵に笑った…。
「ふっふっふっ! どんな密室トリックを使ったと思うガオ…?」

<つづく>

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(次回予告)
…前回、最終回かもと言いましたが、
もう少しだけ続きます(小声)。
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