フライドポテ党の公認候補、ニコリスタッフの(焼)です。

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密男は神妙な面持ちで、広間に集まった2人を見つめていた。
「…皆さんにお集まりいただいたのは他でもありません」

「ライオンこわいよ、わ~ん」
密男は泣き出した。

「待て待て、詳しく話を聞かせてくれ…」
オサオは泣きじゃくる密男の背中をさすりながら尋ねた。

密男は30分ほどダダをこねていたが、
フライドポテトをわんこそばのように食べたりしているうちに
少しずつ機嫌を取り戻し、とつとつと語り出した。
「…それがトイレに行ったらライオンがいて…
 ライオンのヒントのおかげで真犯人はわかったけど…
 でも代わりにかけっこ対決をすることになって…」

「そう…大変だったのね…って、えっ? 今、真犯人がわかったって言った?」
ヤキコは思わず、すっとんきょうな声をあげた。

「そんな! 真犯人はライオンじゃなかったのか? 教えてくれ、いったいだれが…!」
オサオは興奮気味に密男に迫ったが…。

「真犯人なんて今はどうでもいいでしょうがぁ!
 こちとらライオンとかけっこすることになってるんですよ!
 真犯人とか、事件の真相なんて、ジャガイモ畑のコヤシにすればいいんですわぁ!」

その後、密男は3時間ほど不平不満を並べていたが、
フライドポテトを満漢全席のように食べたりしている内に
少しずつ機嫌を取り戻し、とつとつと語り出した。

「それではこの密室事件の真相について話しましょう…。
 まずは、そうですね…私にはずっと気になっていたことがありました…。
 それは、オサオさんのパズル作家としてのペンネームのことです」

「私のペンネーム…『クイーンオブパズル』のことかい?」

「ええ、ペンネームの由来なんて人それぞれですから、
 そこに理由を求めても詮ないことかもしれません。
 それでもジェントルマンなオサオさんが、
 『キング』ではなく『クイーン』を選んだのは
 どういう理由なのだろうか、とオラは考えてしまったのです」

「私のペンネームの由来を知らなかったのか?
 …私はてっきりヤキコさんから聞いてるものだとばかり…」

「いえ、ヤキコさんはあえて伏せていたのです。
 そしてそれこそが、密室を成立するための重要なカギとなっていたのです…。
 そうでしょう? …真犯人のヤキコさん」

「…ヤキコさんが、真犯人…!?」
オサオは目を丸くして、ヤキコを見つめた。

「…フフフ、面白い冗談を言うのね」
ヤキコはおかしそうに笑った。
「…もし推理が間違っていて、私が真犯人じゃなかったらどうしてくれるの?」

「…そのときは、オラはフライドポテトを食べるのを1週間やめる!!!」

ヤキコとオサオは思わずノドを鳴らした。
…あのフライドポテト中毒の密男が1週間もフライドポテトをやめる、
その覚悟の大きさに驚嘆したからだ。

「それなら聞かせてもらおうかしら、『クイーン』がどう事件に関わってくるというの?」
ヤキコの顔にも緊張が走っている。

「『クイーン』はアメリカの推理小説家、エラリー・クイーンからとったもの…、
 そうですね、オサオさん」
密男が尋ねると、
「その通りだ…よくわかったね」
とオサオは感心した様子で答えた。

「一応ヒントはありました。オラが泊まらせてもらった部屋の本棚には
 『Xの悲劇』や『九尾の猫』などのエラリー・クイーンの著作があったんです」

「おそらくオサオさんは、エラリー・クイーンの愛読者なこともあり、
 そこからペンネームをつけたのでしょう。
 
 いとこどうしの2人、フレデリック・ダネイとマンフレッド・ベニントン・リーが
 共同で『エラリー・クイーン』というペンネーム用いたことにあやかって、
 いとこどうしのオサオさんとナジオさんも
 共同で『クイーンオブパズル』というペンネームを使うことにしたのです」

「まさに密男くんの言うとおりだが、なぜヤキコさんは
 それを隠したりしたんだ?」
オサオが疑問を口にした。

「それはナジオさんがパズル作家であることを隠したかったからです。
 パズル作家なのはオサオさんだけと思わせることで、
 ナジオさんに電話で言ったある言葉の意味を
 オラに勘違いさせたかったのです。

 オラの記憶が確かなら、密室事件が起こる前の電話で
 ヤキコさんはナジオさんに対してこう言っていました。

 ちゃんと鍵はかけたの?

 とね」

「それがどうしたって…まさか…!」
オサオは何か気づいた様子である。

「そうです…。ふつうに考えれば、扉に鍵をかけたのかどうかを尋ねているのだと
 思う質問ですが、ナジオさんがパズル作家なのであれば、こうも解釈できる

 クロスワードパズルのカギは書けたの?

 という意味にね。
 そのときのオラは、ライオンのことで頭がいっぱいでしたし、
 ナジオさんがパズル作家であることも知りませんでしたから、
 そこまで考えが至ることはありませんでした。

 おそらくは、編集者であるヤキコさんはこの電話の前に、
 作家のナジオさんにクロスワードの依頼をしておくことで、
 ナジオさんが質問をそのように解釈するように仕向けていたのでしょう。

 これでナジオさんは、この時点では部屋の鍵を
 かけていなかった可能性が生まれました。
 これでヤキコさんのアリバイも崩れたかと思いますが…」
密男がフライドポテトを頬張りながら、ヤキコに尋ねた。

「どうかしら…まだその推理には穴があるわ…」
ヤキコは頬張っていたオニオンリングを飲み込んで、ゆっくりと答えた。

<つづく>

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(次回予告)
密男 vs. ヤキコの対決に
終止符が打たれるのかもしれない!!!
打たれないのかもしれない!!!
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