すっかり暑くなって、フライドポテトが恋しい季節になってきましたね。
ニコリスタッフの(焼)です。
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番外編
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前回までのあらすじ
密男とライオンのレースが始まった!
ライオンがしかけたトラップにひっかかり
密男は転倒してしまうが…。
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「古代エジプトにおいて、ライオンは太陽の象徴であったらしい」
太陽を背に今にも襲い掛かってこようとしている、雄々しいライオンの姿を見ながら密男はそんなことを考えていた。
人間の走る力は、やはりライオンにはかなわないのか…。
いや…違う。人間の英知は…生み出してきた!
不可能を可能にする力を…!
ライオンを越えるスピードを…!
密男は目を見開くと全身を回転させ、宙から襲い掛かってきたライオンの攻撃をかわした。
「ふん…! 回転して、うまくかわしたようだがオレのほうがスピードが上ガオ!
無駄なあがきはやめ…ナッ! ナンダガオ!」
ライオンは驚いていた。密男は体を回転させて攻撃を避けたあと、また立ち上がると思っていたからだ。
だが違った。密男はそのまま猛スピードで回転を続けて、館へと向かっていったのである。
人間の英知…そう、自動車だ。
人間は「回転」の力を使う自動車を発明し、ライオンをしのぐスピードを実現した。
密男もまた「回転」を極めることによって、今までの自分を越えるスピードを手に入れたのだ。
ライオンは予想外の事態に一瞬あっけにとられていたが、すぐに追撃を再開した。
ライオンは考えていた。
「なんてことだガオ…。こんな奥の手があったなんて気づかなかったガオ…。
常人には当然あのようなスピードで横回転はできないだろうが、密男の超人的な身体能力が、あんな無茶を可能にしているガオ…。
…そういえば、レースに勝つために密男の情報を収集していたときに、近所の人が『密男さんったら、一日中ゴロゴロしていて困っているの…』と言っていたが、今考えてみればあれは『寝ころびながら怠惰な一日を過ごしている』ということではなく、『ゴロゴロ転がる特訓をしていてうるさい』という苦情だったのかガオ…」
ライオンが前を見据えると、密男との距離は変わっていなかった。
回転する密男は、ライオンと同じくらいの速さらしい。
普通に考えれば、ライオンは密男に追いつけないだろう。
しかしライオンはあきらめずに、さらに思考を進めた。
「…もし、あの回転移動になんの欠点もないのなら密男は最初から、
あの移動をしていればよかったガオ…。
それをしなかったのにはきっと理由があるガオ…。
今思いつく可能性は2つあるガオ…。
1つはそのままでは扉に入れない、ということガオ。
扉は人間が立ちながら入ることを想定しているから縦長のことが多いガオ。
まさか転がりながら入る人間がいるなんて思ってないガオ。
実際、館の後ろにある2つの扉は縦長で、一度立ち上がらないと中に入れず、この一瞬の隙にオレが密男に追い付くチャンスがあるガオ。
もう1つはカーブに弱そう、ということガオ…。
館の表玄関の扉は横幅が広く、転がりながら入ることは可能そうだガオ。
でも、表玄関に行くまでには少なくとも2回カーブを曲がらなくてはならず、失速がまぬがれないガオ…。
どの扉から入るのかはわからないガオ…。
ただ扉から入る場合は、「いずれにしても」タイムロスが生まれるから、それがチャンスガオ。
それは窓や他の入口から入る場合も同じで、あの回転の体勢からスムーズに家に入るのは至難の業ガオ」
ライオンは勝機を見出して、ほくそえんだ。
密男とライオンは、猛スピードのまま館の裏庭に入った。
向かって左側の扉は閉まっており、右側の扉は開け放たれていた。
密男は向かって右側の扉にむかって一直線に高速回転をして、ライオンもそれに続いた。
密男とライオンの距離は一定のままであった。
ライオンは再び考える。
「右の扉にこのまま入るのであれば、扉を閉めるまでのタイムロスでオレの勝ちガオ。
もし、正面の扉まで行こうとするならばカーブでの失速によりやはりオレの勝ちガオ…」
しかし密男との歴戦の経験が、ライオン自身にこう告げる。
「…密男が、ここで終わるはずがない」と。
しかし密男はなおも直進を続けて、右の扉の目前まで迫っていた。
「…密男! …どう出るガオ!」
ライオンが雄たけびをあげたときである。
右の扉がひとりでに閉じ始めたのだ…!
風圧だ…!
一瞬のうちにライオンは確信した。
密男の圧倒的な回転は周囲に風を巻き起こす。
それによって、扉がひとりでに閉じたのだ…!
そして…それだけではなかった。
密男が扉の前を通り過ぎたあと、今度は扉がひとりでに開いたのだ!
扉は一度風圧で勢いよく閉まったあとにその反動で小さく開く、さらに扉を通り過ぎた密男が巻き起こす風圧により、再び大きく開いたのである!
ライオンは笑っていた。
「ククク…、自身のコーナーでの失速を見越して扉を障害物にした、というわけかガオ。
自分が通るときは扉が閉まっていて障害物にはならないが、オレが通るときには再び開いていて障害物になる。
回転移動がカーブで失速することを見越して、このような策を講じるとはさすが密男ガオ」
「だが、これくらいの障害物だけで『コーナーの獅子』と呼ばれたオレとの距離を離せると思ったのかガオ!!!」
ライオンがかれいなステップで館のカーブを回ろうとした、そのときである!!!
「ガオッ!!!!!」
突然目に飛び込んできた「肉」の字、ライオンは反射的にその肉の字に向かってくらいついてしまった。
「こ、これは…フライドポテト…というやつガオ…!?」
それは大きな皿にケチャップで貼り付けられたフライドポテトであった。
ライオンが「肉」の字を反射的に襲ってしまうのを利用して、密男が仕掛けたトラップであった。
「…あの扉を風圧で開け閉めする策は、この作戦を隠すためのブラフだったのかガオ!?
扉を開けることでオレの進むルートを限定して、より効果的に突然に『肉』の字を見させるための撒き餌ガオッ…!!!」
ライオンは我に返ると、少し遠くで転がり続けている密男を再び追いかけ始めたのだった…。
<つづく>
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(次回予告)
もしかしたら、次回が最終回…!?
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