どうも(ケ)です。
パリ五輪が終わり、つづいてパラリンピックが始まりますね。フランスでがんばってる各国の選手たちにエールを送ります。

さて。
第5回の記事で、アメリカ風、イギリス風のクロスワードというものがある、という話をしました。米英それぞれのお国柄があり、典型的なのは盤面の黒マス配置です。

そして、フランス風クロスワードと呼ばれるものもあるのです。
大きな特徴は以下の二つ。
・ヒントは、列ごとにまとめられている。
・盤面の黒マスは少なめで、配置は非対称が多い。黒マスはタテヨコに連続しない場合が多い。
「パズル通信ニコリ」145号でも、フランス風のクロスワードを載せたことがあります(下図参照)。

フランス風クロスワードの一つめの特徴、これは一体どういうことかというと。
盤面のある1列の中で、左から右、あるいは上から下へ入る言葉順に、そのヒントが列挙されているのです。1番目のヒントの答えは、列の中で最も左あるいは最も上に入り、2番目はその右あるいは下、という具合になっています。
このフォーマットのため、各列に番号や記号が書かれています。図の例だと、ヨコ列には数字が、タテ列にはアルファベットがそれぞれ振られています。その数字やアルファベットごとにヒントはまとめられています。
そして、盤面のマス目中に数字は振られていません。
くわえて二つめの特徴があるため、黒マス連続があり、配置が対称形なのを基本とする米国や英国のクロスワードとは、盤面の見かけが大きく異なります。

なんでまたこんな独特のフォーマットになったのか。そこについて説明している資料を見つけられていませんので、それは今後の課題です。
もしかしたら、フランスの人は、米国や英国のやり方に従わないことにこだわったのかな、と勝手に考えています。歴史的にも政治的にも、米英に対していろいろ複雑な感情を抱いていそうじゃないですかフランスって(偏見)。

このフランス風フォーマットの大きなメリットとして。「盤面に小さな数字を入れなくてもいいから、印刷工程が楽そう」という点があります。
盤面に、ヒント数字をもれなく間違いなく入れていくのが大変な作業であるのは当然です。それを一切しなくてよいのならばずいぶん省力化できるはず。
そんな合理化が、フランス風クロスワードが生まれた原因かも知れないと想像していますが、真偽はまだ分かりません。

もちろん、デメリットもちゃんと存在しています。最大の問題点は、大きな盤面になると、解くのが面倒になる点です。
盤面が大きくなると、1列の中に入る言葉の数は当然ながら増えます。ニコリ刊「パズル・ザ・ジャイアント」に載っているヨコ39マス×タテ31マスのクロスワードだと、1列の中に10単語くらい入っていることはよくあります。
1列の中に2~3個ならまだしも、10個もヒントがあったら、そのヒントの答えがどの場所に入るか、列をたどって数えなければなりません。数え間違えたら大変。
「20世紀クロスワード」「メガクロス」みたいな超細長クロスワードだと、まともに解くのはもう不可能でしょうね。
この単語を数える面倒くささを減らすため、すなわち1列に入る単語数を抑えるために、黒マスの個数を少なくする傾向が生まれたんじゃないか、とも思います。黒マスが増えればそれだけ列が刻まれて、単語数が増えがちですからね。黒マス非対称配置なのも、黒マスを減らす言葉組みの都合に合わせるためなんじゃないかな。

さてさて。
このフランス風クロスワードから生まれたパズルに、「ラインラインクロス」というものがあります。
ヒントが列ごとにまとめられているのはフランス風と同じ。ただし、ヒントの並ぶ順番は、列の中でシャッフルされています。1番目のヒントの答えが、最も左あるいは最も上に入る言葉とは限らないのです。文字数や言葉の絡みから、どこに言葉を入れるのか考える必要があります。通常のクロスワードよりも、パズル風味が濃くなってるのです。
ラインラインクロスが初登場したのは、1985年のニコリ刊「クロスビー」3号でのこと。当時の編集部員に尋ねてみたところ、フランス風クロスワードをきっかけに、編集部の誰かが思いついたパズルなのだそうな。今では「フレンチクロス」という名前で載せている本もあるみたいですね。
ということで、今回のパズルは、ラインラインクロスです。e-クロスワードはラインラインクロスには対応していませんので、汎用ASPでの出題になります。

ラインラインクロス、ある1列のヒントを似かよったシリーズ的なヒントにすることで、見た目や解くときのインパクトをアップできます。そこが魅力の一つですね。
ではまた次回。