文章:(ケ)
テレビ朝日系列に「くりぃむクイズ ミラクル9」(https://www.tv-asahi.co.jp/miracle9/)というクイズ番組があります。私(ケ)も晩ご飯を食べつつよく見てます。パズルっぽい味付けのクイズもあって楽しいのですが、そういう問題だと頭がお仕事モードに戻ってしまうのがやや悩みのたね。

この番組に「漢字でヒント!クロスワードクイズ」というクイズがあります(https://www.tv-asahi.co.jp/miracle9/quiz/)。クロスワードのヒントを漢字1文字で出して、入る言葉を答えさせるというもの。答えが分かったあとでも、どういうヒントを出すべきかを視聴者も考えられる、参加性の高いよい企画だと思います。

このクイズでは、盤面はスケルトン風(https://www.nikoli.co.jp/ja/puzzles/skeleton_puzzle/)のものが使われています。このスケルトン的な盤面のクロスワード、歴史的にみると初期から多く作られており、伝統的な盤面形式ともいえそうです。
我々が今よく目にするクロスワード盤面の多くは、スケルトン的な盤面とは見かけの違いがあります。これは盤面に入れる言葉を増やす方向、すなわち文字が入る白マスを増やし言葉を句切る黒マスを減らす方向へと変化したからでしょうね。そしてそれにともない黒マスの配置のしかたにもいろいろな特徴が現れてきました。
今回はこの黒マス配置についてのお話です。

クロスワードについて調べると「アメリカの問題とイギリスの問題の見かけの違い」という話題によくいきあたります。具体的な例を示せば下図の通り。

アメリカ式、イギリス式とも、「黒マスのタテヨコ連続あり」「黒マスは対称に配置される」原則は共通。そしてアメリカ式ではさらに「白マスはすべてタテ・ヨコ2つの言葉で共有される」という原則が付け加えられます。イギリス式ではその原則はなく、1つの言葉としか絡まない白マスもあり。つまりは黒マスによる対面ふさがりや袋小路があってもよいということです。

その結果、アメリカ式は「白マスの固まりが大きい」、イギリス式は「黒マスで挟まれた白マスが多い」という具合に見かけの差が生まれます。言い換えれば、アメリカ式はカックロ風(https://www.nikoli.co.jp/ja/puzzles/kakuro/)の外見、イギリス式はナンスケ風(https://www.nikoli.co.jp/ja/puzzles/number_skeleton/)の外見となりますか。この違いは米英のお国柄の違いが原因ともいわれますが詳細は割愛。
日本語クロスワードは、見かけからいうとイギリス式よりが多数派じゃないかと思います。

日本語でもアメリカ式の黒マス配置による問題は作れます。下図はその盤面。ニコリ刊『いろいろクロスワード2』(https://www.nikoli.co.jp/ja/publication/word/iroiro_cross/)掲載の「アメリカ式クロスワード」です。作者は私(KGEC名義)。

実はこのアメリカ式クロスワード、黒マス配置のしかた以外にもう1つ「全単語3文字以上の長さ」という特色があります。英語ではアルファベット2文字の単語が少ないという事情もあり、アメリカ式でもイギリス式でも2文字単語を使わない盤面が作られる場合が多いのです。

アメリカ式で黒マスタテヨコ連続があるのは、すべての白マスをタテヨコ双方の単語で使用する原則を満たすためだと考えられます。これはカックロの黒マス配置と同じ理由です。そうしないと、盤面の端から1マスはさんだ箇所に、黒マスを配置できなくなりますからね。

一方で、イギリス式でも黒マスタテヨコ連続を使うのは、2文字単語の使用を避けて盤面を作るために必要だからと私は考えています。黒マスを配置してみると実感できるのですが、2文字言葉も黒マスタテヨコ連続も使わない盤面を作ろうとすると、制限がいささか厳しくなりがちなのですよね。無理じゃないけど量産や変化が大変そう。

それに対して日本語では2文字単語が豊富なため「イギリス式の黒マス配置」かつ「黒マスタテヨコ連続なし」で問題なく盤面を作ることができます。これがいま我々が多く目にする黒マス配置につながっているのではないかと思います。

日本語クロスワードでアメリカ式に類似した黒マス配置の可能性はなかったのでしょうか。2文字単語も含んだほうが日本語の特性を活かせますから、アメリカ式そのままではなく「カックロ式黒マス配置」とでも呼ぶべき配置。

試しにカックロの盤面でクロスワードの盤面を組んでみると、問題なくちゃんと組めます。実際にこういう黒マス配置はこれまでにも提唱されたことがあります。

私の印象としては、カックロ式黒マス配置には長所も短所もやはりあるという感じ。そのあたりも含めて次回もまた黒マスの配置のしかたについていろいろ話を広げる予定。

参考資料
「遠山顕のクロスワードの謎」遠山顕 日本放送出版協会