文章(絵も):(ケ)

あけましておめでとうございます。
というあいさつはそろそろ時期おくれになってきてますが2022年最初の回なのでごかんべんを。なにしろはじめは肝心なのです。

今年も例年同様に、お正月用のクロスワードのお仕事が何件もありました。今年は寅年ですから「トラ」という言葉を盤面に入れたものもいくつか。
これは幸いなことだと思うのですが、十二支の動物、ネズミ・ウシ・トラ・ウサギ・タツ・ヘビ・ウマ・ヒツジ・サル・トリ・イヌ・イノシシの12種類すべて、ンやー、ヂやヅなどを含んでいません。
どういう意味かというと、どれも盤面の左上のスミ、ヨコ1やタテ1になる部分に入れてもまったく問題ない言葉ばかりなのです。これ、クロスワード的にはなかなかありがたいこと。
クロスワードを解くとき、盤面の左上から手をつける人は多いです。その場合、まず最初に見るヒントはヨコ1やタテ1になります。このはじまりの部分で「今年の干支」のようなヒントを使うと、お正月感をかもし出せてまことによろしい。なにしろはじめは肝心なのです。
十二支の動物名はともかく、世の中にはヨコ1タテ1として使いにくい単語があまたあります。ンやーのように語頭に来ないカナを含む言葉が、クロスワード盤面の上辺や左辺に接していると、黒マスを配置する必要があるわけですが、そこで問題が生じる場合があるのです。具体的に言えば、第6回で使った下の図のような例。

つまり、語頭に来ないカナが連続している単語は、盤面の上辺左辺に接する配置ができないのですね。これは困ります。
たとえば「カメルーン」が最初のヨコの単語になるクロスワードを作ってください、というオーダーが来たらどうしましょう。カメルーン大使館さんからそういう依頼が来る可能性はゼロではありません。カメルーンから来なくてもオマーンとかバーレーンとかセントビンセント及びグレナディーン諸島とかから依頼される可能性はゼロではありません。どうしましょう。
などとことさらにふざけた態度で困ったこまったと騒いでおりますがもちろん解決手段を持っているからこそのんきにふざけているのです。ご心配なく。各国にふくむところはまったくございません。各国関係者のかたがたご容赦ください。
実際に「カメルーン」がヨコ最初の単語になる盤面を作るなら、下のような解決をするでしょうね。

みてのとおり、盤面左上のスミに黒マスを配置して、上辺との間に白マスのスキマを作るわけです。これだけで無事に解決。めでたしめでたし。
解き手がまずはじめに目にするヒントや、はじめに入れることになる言葉に、インパクトや魅力があると、その問題の印象も強くなります。つまり、はじめの言葉は、楽しいパズルとしてのアピールに大きく関わる要素のひとつです。ですから、はじめの部分で使う言葉は、なるべく制限されず多様に使えるほうがありがたい。やっぱりはじめは肝心なのです。

ところで先ほどの盤面ですが。「盤面のスミに黒マスを配置してもよいんですか」「盤面のスミを黒マスにするのはいけないと聞いたことがあります」と思われたかたもいるかもしれません。
確かに「盤面のスミを黒マスにしてはいけない」という意見はあります。けっこう昔からあります。ですが、それは禁止ルールとまでは言えない、というのが私(ケ)の見解。
少なくとも、上記のような解決手段として盤面スミの黒マスが利用できるのですから、メリットがあるのは確実です。
その一方で、スミの黒マスにより、解き手が問題を解きづらくなる状況はあまり思いつきません。つまり解き手にとってのデメリットは大きくはない。
このように比較してみると、「スミの黒マス」を禁止する必然性は少ないのではないでしょうか。つまり盤面スミに黒マスを配置してもよいのでは、という結論に至るわけです。
もちろん、作る側の自己基準として盤面スミに黒マスを置かない主義の人がいても、それはまったく問題ないと思います。作者本人が納得していればそれでOKでしょう。ともかくいちばん大事なのは、解き手が楽しめるパズルを作り出せることですから。
ということで、2022年も楽しいパズルをたくさん作るべくがんばっていきたいと思います。

年頭からなんだか固い決意表明になっちゃいましたが、なにしろはじめは肝心ですからね。今年もよろしくお願いします。