フライドポテトで、気分も揚げ揚げ。
ニコリスタッフの(焼)です。
○バックナンバー
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
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前回までのあらすじ
「肉」の字をめがけて襲ってくるライオンが徘徊するなか、
何者かがナジオの額に「肉」の字を書いた。
防犯カメラは、離れに侵入しようとするライオンを映していたが…。
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「うむぅ…。にわかには信じがたいが、密男くんが言うとおり、
ナジオの額に肉という字を書いたというのはライオンなのかもしれないね…」
オサオはうなった。
「昨日の夜8時の時点では、ナジオさんの住む離れは施錠されていました。
離れの扉の鍵が開くと自動的に防犯カメラが起動するけど、
夜の8時以降に映っていたのは、ライオンだけ…。
これってつまり、ライオンが鍵を開けたってことですよね」
ヤキコも同調した。
「だが、そうなると余計にナジオの身が心配だ…。
ナジオが内側から鍵をかけていたとしても、ライオンが鍵を持っていては意味がない。
一刻も早くナジオを助けなくては…」
オサオは心配そうに言った。
「その点に関してですが…ナジオさんがライオンに食べられることはないでしょう…。
なぜならあのライオンの狙いはあくまで、オラだからです。
オラがルーパーイーツでフライドポテトを頼んだときも、
アメェイゾォンで冷凍フライドポテトを頼んだときも、
宅配の人を襲うことはありませんでした。
ドアが開いたすきに部屋に侵入してオラを襲おうとしただけです」
密男はいつになく真剣な表情だ。
「密男がそんな真剣な表情をすることがあるなんて…」
ヤキコは驚いた。
「君がそこまで真剣な表情で語るなら、信用しよう…。
今まで君がライオンについて語ってきたこともすべて本当のようだしね…。
ただ離れの様子はここからずっと監視していさせてほしい。
もしも離れにライオンが侵入しようとしたときは、
私はこの命に代えてでもナジオを助けに行くよ…」
オサオの目はまっすぐに離れを見据えている。
「…私たちもお手伝いします。交代で見張りましょう」
ヤキコは提案した。
その後、3人が3時間ずつ交代で離れを監視して、
もしなにか異変があれば他の2人をすぐに呼び出す、ということで話がまとまった。
「ただ一つだけ気になるのだが、ライオンはどうやって鍵を手に入れたんだ…」
オサオはけげんそうな顔で疑問を投げかけた。
「それはおそらく、ナジオさんがドアに鍵を差しっぱなしにしていたとかじゃないかしら。
ナジオさん、そういうところ抜けてるから」
ヤキコが答えた。
2人の会話を横で聞きながら、密男は内心ほっとしていた。
ついさきほどまで、ナジオの額に「肉」の字を書いた犯人が
オサオかヤキコのどちらかではないかと疑っていたからだ。
屋敷に閉じこもっていても、気が休まることがなかった。
だが、ライオンの犯行であるなら彼らは仲間だ。
それに、ナジオのことをあれだけ心配している2人が犯人のはずがない、と密男は確信した。
ほっとしたせいか、密男はトイレに行きたくなってきた。
「じゃあ、オラ少し休ませてもらいます!」
密男はそう言って部屋を離れた。
~トイレ~
「…っ!!!」
密男は便座から転がり落ちた。
驚きのあまり、声も出ない。
「…惜しかったガオ~」
ライオンが心底くやしそうな顔をしている。
「…危うくオラのぱおんが、ぴえんするところだった!
…そんなことより、ナジオさんを解放するんだ!」
密男は震えで、壊れたブラウン管テレビの映像みたいになりながら言った。
「ナジオさんって離れにいる、困り顔の男性のことガオ?
別に彼に危害を加える気はないけど、額に『肉』と書いてあると体が勝手に動いちゃうガオ。
なんで彼は額に『肉』って書いてあるガオ?」
「えっ…」
密男は、再び絶句した。
ライオンが油断させるためにウソをついているのか、とも思ったが
ライオンはいつになく真剣な表情をしている。
ウソはついていないだろう。
「…なにか事件の匂いがするガオね。
…オレに話してみるがいいガオ。
解決のヒントを教えられるかもしれないガオ」
ライオンが提案すると、密男はいぶかしがりながらもこれまでのいきさつを話した。
~10分後~
「なるほど、犯人がわかったガオ!」
密男の話を聞き終わったライオンは、こともなげに言った。
「そんな…! …本当は自分がやったのに誰かに罪をかぶせようとしてるんじゃないだろうね…」
密男は疑心暗鬼だ。
「失礼ガオ! …さっき、密男くんは『屋敷のなかの電話線が切られていた』と言っていたガオ。
屋敷のなかに侵入できていないオレがそんなことできるはずないガオ。
犯人は屋敷のなかにいるガオ」
ライオンが語気を強めると、密男も「たしかに…」と言って納得した。
「それで、犯人は誰なんだ?」
密男が聞くと、ライオンが満面の笑みで言った。
「密男の肉を食べさせてくれたら、教えてあげてもいいガオ」
「そ、そ、そ、そ、そ、そんなのムリに決まってるじゃないか!!!」
密男は、壊れかけのレディオみたいに声を震わせた。
「しかたがないガオね…じゃあ、勝負させてほしいガオ」
「勝負…?」
「そうガオ!
離れのドアに差しっぱなしになっているはずの鍵を
オレがここまで持ってくるから、密男くんは離れの鍵を開けに行くガオ。
ドアが開いたのを合図にして、おにごっこを開始するガオ。
オレは10m離れたところからスタートするガオ。
密男くんがこの建物まで帰りつけたら密男くんの勝ち、
その前にオレが追いついたらオレの勝ちガオ。
勝負を受けてくれるなら、この事件のヒントもあげるし、
ナジオさんに手出しもしないガオ。
……まあ、そもそも密男くん以外の肉に興味はないんだからね、ガオ////」
ライオンからの勝負の申し出を受けるべきか、密男は悩んだ。
しかし、このまま屋敷で待っていてもなにも解決しない…、
それに、これまでの対決のなかで自分のスピードがライオンよりも速いことは証明されている…、
そこまで考えて、密男は意を決した。
「その勝負のった!」
「その意気やよしガオ!
それじゃあ、ヒントガオ!
今回の密室事件は分類するならば、『みせる』タイプの密室ガオ!」
「『みせる』タイプ…、そういえば第1回にそんなことが書いてあったな」
「そうガオ。『みせる』タイプは、密室だと思わせればいいだけ、というのがポイントガオ!」
そのとき、密男の脳髄にイナズマが走った。
「…そういうことか。オラのこんがり狐色の脳細胞が
たったひとつの真実をまるっとお見通ししたぜ!」
密男が決め台詞っぽいものを叫んだ。
「よかったガオ!
それじゃあ、約束どおりオレは鍵をとってくるガオ」
「とってきたガオ」
「…そんなばかな。5秒もたっていないぞ…」
離れからこのトイレまでは往復で200メートルほどはある。
時速に換算したら約150km/h、ふつうのライオンの2倍ほどの速さで移動したことになる。
「…なぜ、オレが『肉』の字がついたものを襲ってまわっていたかわかるガオか…。
特訓ガオ…。
密男くんにスピードで勝るため、『肉』という字を見つけては猛スピードで攻撃したガオ。
今では密男くんよりも速くなっているはずガオ…。
ククク…勝負が楽しみガオ…」
そう言い残して、ライオンはその場から立ち去った。
密男はぴえんした。
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(次回予告)
密男の名推理がキラリと
輝くのかもしれない!
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