文章:(塚)
2018年のニコリ出版物に載ったパズルから、印象に残った作品・気に入った作品を皆さんから募集し、それらを発表する「ペンシルパズル・オブ・ザ・イヤー2018-2019」のコーナーです。
1月ごろに次ニコ上で募集していましたが、ようやく発表の時期がやってまいりました。前回までは『月刊ニコリスト』誌上での発表でしたが、今回からはweb上での発表となります。
以下、推薦された作品と推薦者のコメントを、本ごと(刊行順)に紹介。ニコリスタッフ(安・竹・く・も・将・塚)からの推薦も含みます。ただし、コメントの中にはネタバレもたくさんありますので、あらかじめご理解の上でお楽しみくださいね。

パズル・ザ・ジャイアント31号

○月か太陽・ザ・ジャイアント2番 (P.13)  作●齋藤すばる
・外周を1つのエリアで囲んでしまう発想や左下の広いエリアでの迷路化など。
(slaim)
・華やかなメッセージを入れた盤面。
(ハッソウトビ)

○波及効果・ザ・ジャイアント3番 (P.25)  作●第二駐輪場
・第二駐輪場さんの問題は毎年楽しみで、この年は予想の斜め上の考え方だったので特に印象に残っています。
(クロテント)
・最後の数マスがなかなか入れさせてくれないので。
(ハッソウトビ)

○四角に切れ・ザ・ジャイアント2番 (P.45)  作●二水酸化カリ
4つある20と18のペア、全て異なる四角の組み合わせになるのが見事!
(ヤナヘー)

○フィルオミノ・ザ・ジャイアント3番 (P.52)  作●深駆
50。
(slaim)

○ジグソークロス・ザ・ジャイアント1番 (P.56)  作●いこいの森
ジャイアントならではの大きなピースを使いながら、「先に形を確定させる」系の解きかたを使っているところが好きです。大胆かつ繊細。
(竹)

○ましゅ・ザ・ジャイアント2番 (P.67)  作●宮崎晋一
初形から想像できる大技と想像してなかったもう一つの大技のダブルパンチ。
(slaim)

○スラローム・ザ・ジャイアント3番 (P.74)  作●あるかり工場長
初形のインパクトと外周を使った大仕掛けは今年も健在。
(slaim)

○ドッスンフワリ・ザ・ジャイアント2番 (P.77)  作●ろんぐらいふ
解いた答えと元の黒マスと合わさって初めてパズルタイトルが表れるというビックリ作。
(く)

○シャカシャカ・ザ・スーパージャイアント (とじこみ4)  作●くだぎつね
旅行先にもっていって時間を忘れて没頭していたら、のぞみに乗り遅れそうになりました。
(ゆでた丸)

毎号、数々の名作が生まれる『パズル・ザ・ジャイアント』は、今回いちばん多くの推薦が集まりました。ジャイアントサイズならではの大胆な見た目や展開を楽しめる作品がてんこ盛りの1冊だった、ということですね。ちなみに、月か太陽はこの号が『パズル・ザ・ジャイアント』初掲載でした。シャカシャカ・ザ・スーパージャイアントは、見た目もこの本ならでは。

ニコリのエニグマ2――直感で解くパズルの本

○唯一の地 (P.29)  作●おく山みつゆき
ほかの問題とくらべて異質。情報が少なすぎて最初「何なのこれ?」と思わざるをえない、ぶっきらぼうなところが素敵。
(も)

○とある一覧表 (P.38)  作●OX
表形式にしているのがうまい。同じ作者の「時間の問題です」もそうですが、何となく解けたときにわかりやすさというか、温かい感じ(?)がした。
すごい主観的な意見ですけども。
(も)

○ある状況で (P.54)  作●じるし
一読して「大きな」とか「色の違う」とか、連続したアルファベットとかのいかにも意味ありげな文章。イメージが湧きそうで湧かず非常にもやもやした分、何度も読み直してひらめいたときの気持ちよさといったらなかった。
で、非常に腑に落ちるのに、解答となる状況が妙に中途半端というギャップも良かった。数年に一度の傑作と思います。
(も)

○縁熊城の冒険 (P.60)  作●深駆
エニグマ1でも登場したカップルに、またこいつらか~と思いながらも頑張れと応援しつつ謎はこちらが解くという不思議な状態に。解き終わった感想は「ごちそうさま」。
(く)

『エニグマ』系の問題は、とにかく見せ方の自由度が高いので、どれも個性的です。「縁熊城の冒険」は疾風と美寛のカップルが登場する、前巻に続くシリーズ。この後出てきますが、『ニコリ163号』では「縁熊島の冒険」で再び活躍しました。謎解きデート、いいですね。

パズル通信ニコリ162号

○Color Maze Composition (P.9)  作●お便所コーロギ
オモテだけ見るとメイロに見えない。発想に脱帽です。
(く)

○へやわけ4番 (P.42)  作●京谷駿希
10×10ながらも同じ展開が随所にちりばめられていて良かったです。
(クロテント)

○ザ・解読ボード (P.104・懸賞パズル3)
ザ・解読ボードが大好きなので。もう少しこまめに掲載されると嬉しいです。
(パウダースノー)

○ホタルビーム・ザ・スーパージャイアント (とじこみ4)  作●坂本伸幸
・もはや源平合戦の様相。
(ハッソウトビ)
・オモロパズル特集という、この号だけの企画でしたが、他のどのパズルとも(ノーマルサイズのホタルビームとも)違う感覚で楽しく解けました。「ワンアンドオンリー」というのはこのパズルのためにある言葉かと。
(安)

ホタルビームのスーパージャイアントの掲載は、とてもレアだなあと思いました。それと、この号のとじこみの紙の色が水色だったので、澄んだ水の上にホタルが飛び交う様子を描いているかのようで、個人的にはなんとなく風情を感じました(春号なので少し時期は早いですが)。

気がるに推理パズル2

○9番 (P.18)  作●深駆
星占いが好きなのと、問題文の会話が面白くて楽しく解けました。
(パウダースノー)

○34番 (P.65)  作●しんまけ
とてもおいしそうな情景が伝わってくる、いやこれは本当に大事で、解いていても楽しくなります。
(山本祐輔)

○51番 (P.96)  作●あるかり工場長
刊行順と時系列が一致しない、と言う設定が面白かった。解いていていい感じに頭を使いました。
(山本祐輔)

推理パズルは、自分の好きなものが題材になっていると嬉しくなりますね。情景描写や独自の設定などでも、作者の個性が光ります。

パズルBOX13

○橋をかけろ8番 (P.29)  作●トクナキラ
投稿されたのが1年半以上前だったのですが、許可を取って掲載しました。
クライマックスの仕掛けがかなり難しい。しかし、そこに至るまでの解き手への配慮を感じました。
(将)

○へびいちご・ザ・ジャイアント (P.96)  作●3次関数
・解く前は真ん中の空白がどうなるかと思ったが、見事に決まってスッキリ。
(hirachan)
・中央部分の大きな空白での、へびの決まり方がカッコいい難問。達成感あります。
(将)

真ん中の決まり方が高い評価を得たへびいちご・ザ・ジャイアント。そもそも、へびいちごの問題でここまで大きな空白があること自体がすごいなと思います。

withクロスワード2

○12番 (P.28)  作●はいカード優さん
1文字も書いていないヒントが複数あるというインパクトたるや。
(も)

パズル通信ニコリ163号

○三つ子をさがせ! (P.3)  作●北条明
イラストがカラフルで可愛いので。
(パウダースノー)

○脱出ゲーム「縁熊島(えにぐまとう)の冒険」 (P.28)  作●深駆
・いろいろなパターンのひらめきパズルを1つの物語に落とし込んだ構成力が見事でした。深駆さんおなじみの(?)イチャイチャストーリーも特徴的ですが、実はスペースの都合で文章を詰めなければならなかったのが心残りで、本当はもっとイチャイチャしていたのを…。
(安)
・「縁熊島」とは何か、というのを解き明かす謎解きですが、それをわからせる手がかりが、何というか結果的に大ざっぱなのですね。
ある意味“ディスってる”とも取れなくない(もちろんそういうわけではないと思いますけれど)。
作者の深駆さんの中で、この「疾風と美寛」はシリーズ化しているみたいで152号デート特集のときの「疾風と美寛」問題ではラブ的なことが最後の答えだったので、ひらめいた瞬間カタルシスをおぼえると同時に顔が赤くなる、という初めての経験をしたのですが、今回はひらめいた瞬間に思わずちょっと笑ってしまいました。
あ、2019年5月発売の「ニコリのエニグマ3」にも「疾風と美寛」シリーズはいますので、買ってください。
(も)

○フリースタイルクロスチック (P.50)  作●ヤキオ
・文句なしに面白いです。さんざん悩んだ後に一つのきっかけにヒラメき、全体がするすると解きほぐれていく爽快感がたまりません。「漢字パズル 百花繚乱」収録の3作品も同じく良かった!
(ヤナヘー)
・見た目からして面白そうで、解いてみても日本語って面白いなと思った。
(パウダースノー)

○ザ・浮きだしメイロ2番 (P.81)  作●湯沢一之
答えは言えないけど、正解路だけだと一瞬「風呂?」となり、よく見ると何かあり、さらにループに美しい物語が隠れているという…まあ、まだの方は解いてください。
(く)

○四角に切れ6番 (P.89)  作●ちいなかみきこ
しっかりと難しい四角に切れ。
(半袖)

単発で登場した「フリースタイルクロスチック」は、言葉系ひらめきパズルの新たな一面を開拓したようで、11月の『漢字パズル百花繚乱』には漢字バージョンも掲載されました。どこから手をつければよいのだろうと一瞬戸惑いますが、カギと図をぼんやりと眺めているうちにひらめく感覚がよいですね。矢印にカギがついているというのも、なかなか斬新な気がします。

とことんスリザーリンク3

○97番 (P.106)  作●Guten
・「スリザーリンク、まだこんなことが出来たのか」という新手が出てきます。この新手に気づかないと解けないのもまた見事。
(深駆)
・あるパターンの連続で解けていきます。最後までこだわり抜いていることに脱帽。
(将)

○97番(P.106、作●Guten)・98番(P.107、作●コーヒーまめ)・99番(P.108、作●二水酸化カリ)
ラスト3問がそろい踏んだ感。98番は表出数字が少なめで、スタイリッシュな王道系(?)の解き味。97番と99番は特定の手筋を繰り返す趣向で心意気としては似ていますが、見せ方も違って、個性も感じられると思います。とことんシリーズの中でも全体的にいい感じの1冊になってると思います。スリリンファンの人はぜひ。
(も)

『とことんスリザーリンク3』は、最後の数問が特に傑作だったようです。上級者向けの本の最後の問題ということもあって、手ごたえもかなりのものです。

パズル通信ニコリ164号

○筆記用具使い分けメイロ (P.27)  作●ぺんじゃ
面白そうなので、後で解こうと取って置いた作品。解いてみて、やはり面白かったです。最近流行の脳トレ本にもこういう作品が載っているといいのに。
(パウダースノー)

○ダブルチョコ4番 (P.45)  作●B2
盤面半分が白、残りが灰色、という思い切った初期配置。この配置ならではの独特な考え方を使うことにもなっているので、ホホウと思った。オモロパズルの2軍に昇格したパズルということで、ダブルチョコ自体の今後も楽しみであります。
(も)

「筆記用具使い分けメイロ」は、筆記線の太さが異なる3種類の筆記用具を、指示に従って使い分けながら解くメイロ。筆記用具の種類によって、通れる道と通れない道があるのです。筆記用具特集ならではのユニークな作品でした。

気がるにスリザーリンク4

○45番 (P.57)  作●くだぎつね
配置を活かした、ちょっとおっと思わせる展開があって面白かったですね。
(も)

気がるにシークワーズ2

○27番 (P.34)  作●ねこあい護家
「おいしい物」というテーマですが、広辞苑の語義の説明の中に「美味」とあるものを集めたということで、テーマ立ての角度が新鮮だなと思いました。
(も)

国語辞典の「美味」記述は、辞書を引いていて何回か見かけたことはあったのですが、こんなにいろいろな食べ物に書いてあったとは知りませんでした。好みがわかれそうな食べ物もいくつかある気がしますが…。

ニコリのペンパ2019

○ペンシルズ11番 (P.55)  作●三瀬史学
見た目で遊びながらもスルスル解ける、心地よい問題でした。
(クロテント)

漢字パズル百花繚乱

○フリースタイルクロスチック (P.56~59)  作●ヤキオ
内部制作ですが。漢字のリストから熟語を作るパズルです。これから作る単語と単語の関係性がヒントとして示されているのですが、大がかりな関係性がわかるととても気持ちいい。ひらめきパズルとしてとてもいいと思いました。作ったヤキオさんがすごいのと同時に、原案を考えたももてれうさんもなかなかやるな、と思いました。
(も)=ももてれう

パズル通信ニコリ165号

○熟語できるかできないか (P.15)  作●矢野龍王
8つの漢字(「手」「腕」「足」…など)を2つずつ組み合わせたとき、熟語ができるかどうかに着目した問題。着眼点が面白いと思いました。意外とパッと熟語が成立してるかどうかわからなかったりしますね。
熟語があるかどうかを問題にしているため、ほとんど誰も知らない大辞典レベルの単語が引っかかってきてしまうのはしょうがないんですが、それはそれとして解く気が湧く問題でした。
(も)

○漢数字画数ふくめん算 (P.17)  作●鴈野敏生
「画数」という題材の勝利ですね。たとえば、三、千、万はどれも③だけど、あてはめるものによって桁数からなにからガラリと変わった数式ができる。ふつうのふくめん算とはまったく違った解き心地がおもしろいです。
(竹)

○こたつ・みかん・ナンクロ (P.39)  作●冴戒椎也
作者の想定通りに進まされた、拍手。
(ハッソウトビ)

○ナンバーリンク6番 (P.97)  作●ぶばいがはら
中央で同じように並んでいる数字たちを一体どうすべきかと、楽しく悩まされました。
(塚)

○ましゅ1番 (P.98)  作●U・U
ましゅは、つい難しく作ってしまいがちなパズルなのですが、この問題は最後まで易しさが続いていて良かったです。
(将)

○スリザーリンク7 (P.106)  作●Guten
スリリンで1つの手筋にこだわるという趣向は意外とありそうでそれほどなさそうな気がします。単調にならずに趣向を成立させたという、ある意味渋いスリリン。
(も)

○ザ・嘘地図 (とじこみ4)  作●ブレンダ
本来は昨年のものを評価すべきとは思いますが、やはりこのパズルは目を惹くし、仕掛けが本当楽しい。正直解くのは3分ですが、それでいて充足感に溢れると言うのはなかなかないと思います。
(山本祐輔)

漢字特集の単発パズルが数多く掲載され、「こんなパズルも作れるのか」と、個人的にも漢字パズルのバリエーションの可能性を感じた号でした。「ザ・嘘地図」は3号連続企画の第1弾。これ単体でも楽しめる問題ですが、165~167号の嘘地図をすべて揃えるとなにか良いことがあるらしいという、一粒で2度おいしい系の作品です。6月発行の167号が楽しみですね。


ということで、今回の「ペンシルパズル・オブ・ザ・イヤー」はここまで。素晴らしいパズルを作っていただいた皆様、そして熱い推薦コメントをご応募いただいた皆様、ありがとうございました。