10月には、体育の日がありました。
上の文章に違和感がありますでしょうか。(ケ)です。
国民の祝日の「体育の日」は、今では「スポーツの日」に名前を改めております。だから、上の文章は、今月のことと受け取ったならば間違いです。もっとも、2020年よりも以前の時代を思い起こした文章と受け取るならば、間違いではありません。そのあたりわざとアイマイにした文章です。
2020年から実施されたスポーツの日、2020年と2021年は東京五輪のため7月に移動しましたから、実際に10月第2月曜日にこの祝日がきたのは昨年2022年が初めて。だからまだ身についていない気がします。うっかりすると旧称の「体育の日」と口走ってしまって老人扱いされるんだろうなあ、とおのが未来を予測しております。
クロスワードで、季節感演出のために、祝日を盤面に組みこむのは定番の手法。
ですが「体育の日」と「スポーツの日」はどちらも6文字。体育とスポーツもそれぞれ4文字。
例えば「10月第2月曜日の、国民の祝日」というヒントで、6文字の言葉を答えさせる。これは体育の日がスポーツの日に変わっても同じなのです。
2020年以前のクロスワードを解いたとき、「ここには『スポーツノヒ』が入るな」と書きこんで、つじつまが合わなくなって首をひねる、ということが、今後起こったとしても不思議ではありません。
クロスワードも時代の流れと無関係ではいられないのです。
昔のクロスワードのヒントが、今の世の中に通用しなくなること、しばしば起こります。言葉が古びて現状にそぐわなくなった、という場合もありますが、事実関係が変わってしまったため、というのもよくある事態です。
例えばさきほどの「体育の日」。
1999年までは、体育の日は10月第2月曜日ではなく10月10日に固定されていましたから、先ほどあげたヒントがそもそも成立しなくなっています。これも時代の変化にクロスワードが適応できない一例ですね。
それと同じように。
2000年代に入ってから「平成の大合併」がありました。日本各地の自治体が合併し、市町村がなくなったり新たに生まれたり、ともかくも大きく変わりました。クロスワードでも、そこを考慮しなければならないことがよく起こりました。
古い知識で盤面を作ったりヒントを付けたりしてしまい、「その地名はなくなりました」と言われたことは幾度かあります。単なる注意不足なのですが、古い資料だと修正が追いついていなくて困りもの。
さいたま市に合併されて消えた市に、与野(よの)があります。ヨノは2文字言葉でけっこう便利だったのですが、関東圏以外でどの程度通用する地名なのかがわかりにくくなって、合併後には使った覚えがあまりありません。
ほかにも、国名のビルマがミャンマーになったり、グルジアがジョージアになったり、ユーゴスラビアみたいに解体されて消失したり。地名のような固有名詞は変化しないと考えてしまいがちですが、そんなことはないのですよね。
2文字言葉といえば、クロスワードの盤面に「ジス」はよく入ります。JISですね。そのヒントに「日本工業規格の略」と付けたことは何度もあります。
JISの日本語の名称、2019年に「日本産業規格」と変更されました。だから前のヒントは今の世の中ではもう間違い。でも長年の習慣でうっかり「日本工業規格」と書いてしまいそうです。なかなか気が抜けません。
私はスポーツ関連にうとく、12のプロ野球球団名をちゃんと言えるかどうかがあやしいのですが、そういう人間からすると「球団名をころころ変えないでよー」と愚痴りたくなることも。問題チェックをした人に「ダイエーホークスってとっくになくなってますよ」と言われた経験があります。ソフトバンクに変わったあとの話です。お恥ずかしい。
古い知識を前提にしてしまうと、間違った内容のクロスワードを作ってしまいかねません。それを防ぐには、新しい情報へのアンテナを張り、勉強をしつづけるほかにないのでしょうね。けっこう大変だよなあ、と思いますが、クロスワードに関わるのをお仕事にしたのは自分でえらんだ道なので、文句を言ってちゃいけませんね。
余談ですが、上記のようなことがあるので、クロスワードパズルは生もので消耗品というのが私の意見。過去の問題を再出題するときは、再編集が必須。
クロスワードは賞味期限内にお解きください。
さてそれでは今回の問題。
時代などによる言葉の変化をテーマにしてみました。
なにぶん作り手がトシヨリなので、昭和懐古、平成懐古、老人の思い出話みたいになってるなあ、と思いますがご容赦を。
ではまた次回。