文章:(ケ)
今回も、まずは問題を出題します。
ニコリのパズルASPサービスの宣伝用に作った、という体裁の問題です。
以下の文章は、すでに上記の問題を解いて、答えもわかっているという前提で、ネタバレしていきますのでご注意くださいませ。虚心坦懐に解きたい、という人は、ここから先へ読み進めるのをひとまずストップしましょう。
クロスワードには、「解く人にキーワードを伝える」ために利用できるという特徴があります。懸賞のように、二重ワクでできる言葉をキーワードにする場合もありますし、キーワードそのものを盤面に組み込む場合もあります。
私(ケ)も、「この言葉を盤面に組み込んでくれ」というクライアントの注文に従ったパズルを作ること、よくあります。広告などに載るクロスワードでよくあるお仕事ですね。盤面に入れたキーワードについて、解き手は「ここに入るこの言葉は何だろう」と考えることになります。その結果、キーワードへの印象が強くなり、記憶に残りやすくなるため、広告に向いているのですよ。
さて。
今回の問題は、解く人に、3つのキーワードを伝えるためのパズルです。
具体的には、ヨコ1、ヨコ9、タテ31に相当する言葉。3つのパズル名です。
そういう目的を持ったパズルは、どういう考えで設計されるのか、というのが、今回の話の要点となります。
今回の場合、盤面のサイズをどうするかから考え出しました。
事前にいろいろ検討してみた結果、盤面サイズは9マス×9マス、黒マスは対称配置、懸賞用二重ワクは設けない、という仕様に決定。
これよりも小さな盤面、たとえば7×7サイズで作るのも不可能ではなかったのですが(下図)、解きやすい問題にするのはちょっとハードルが高そう。広告用クロスワードは、あんまり難しくしないほうがよいのです。黒マス非対称配置も考えましたが、わざわざそうする必然性も思いつかなかったので却下。8×8サイズもあまりよくなさそうなので却下。ということで、9マス×9マスのサイズに決定して作り始めます。
続いてすることは、入れる3語を、どこにどのように配置するのかです。
3語すべて、あるいは2語を絡めた配置を、いくつか検討してみましたが、どうもピリッと締まった配置になりません。
キーワードどうしを交差させることなく、盤面の各所に配置させることにします。そもそも、キーワードどうしを交差させるのはデメリットもあるので、あまり意味のない検討だったな、とこれはあとからの反省。
私がよく使う配置、「ヨコ1」「盤面中央」「タテ最後」の3カ所にキーワードを配置するとしましょうか。このように置くと、解き進める過程でまんべんなくキーワードに行き当たるので、全体的にムードを維持することができる、と私は考えています。
広告として使うクロスワードでは、キーワードを解き手が知っているか否かが重要なポイントになります。「知らない言葉を調べてもらう」ことを前提とする問題もありますが今回はその方向性はナシ。
今回のキーワード3語のうち「クロスワード」は、たいていの辞書に載っている普通名詞です。しかしほかの2語「スウドク」「スリザーリンク」は違います。この2語は、解き手が知らないことを前提にしないといけません。そもそも今回の問題は、これらのパズル名を知らないような人に、パズル名を伝えて知ってもらうことが目的にあるのです。
知らない単語を埋めさせるには、タテヨコの言葉の絡みで決めさせるしかありません。ということは、「スウドク」「スリザーリンク」は、全文字を他の言葉と交差させるような黒マス配置にする必要があります。
ここまで方針が固まると「ヨコ1は誰でも知ってる言葉のクロスワード」「7文字と長めの言葉のスリザーリンクは中央に」「スウドクは右下、タテの最後に」と、入れるべき場所を決められました。さらに、黒マスのいくつかも自然に決められますし、黒マスにしてはいけないマスもいくつか決まります(下図)。
この方針に従って、あまり無理のない黒マス配置、1語でしか使わないマスも減らすようにして黒マスを配置して、下図の盤面が決定しました。
一見して、「クロスワード」のロから始まる6文字単語あたりが大変そうだなあ、と察しが付きます。ロのすぐ下のマスを黒マスにすると、盤面を組むのは楽になるでしょうが、そうするとスウドクのドの字がヨコと交差しなくなります。ここはがんばることにしましょう。
といった計画を経て完成したのが、今回の問題。いろいろ考えながらおしごとをしているのでした。
最後になりましたが、(株)ニコリは現在、CEATEC2022(https://www.ceatec.com/)へ出展中。10月21日までは幕張メッセでリアル開催。オンライン会場は10月いっぱい開いております。パズルASPにご興味ある方は、ニコリのブースをぜひご訪問くださいませ(宣伝)。