文章:(ケ)

パズルはよく懸賞問題に使われます。クロスワードもその例に漏れません。
ニコリでも、いろんな新聞や雑誌などのために、月に数十問ほどのクロスワードを制作しております。みなさんのお目にかかるのもあるはず。会員誌や社内報なんかにも作ってますので、思わぬところで出会うこともあるかしらん。

そもそもクロスワード、最初から懸賞問題でした。
日本で最初に作られたクロスワード、それは大正14年、サンデー毎日3月8日号。そして4月5日号で懸賞が始まり、6月7日号では応募総数44586通、正解者数29852通という盛況になったとか(参考文献:『週刊誌五十年 サンデー毎日の歩み』毎日新聞社)。
そのころの懸賞の応募は、クロスワードの完成した盤面そのものを送るというやり方。誌面の盤面を切り取って送らせたり、はがきに盤面を書かせたり、方式はいろいろあったみたいです。
このやり方、わかりやすいんですが、送る側の手間のみならず、チェックする側としてもけっこう大変だったはず。懸賞の当選者を選ぶだけならともかく、正解者の数を出すには、すべての盤面をひとマスひとマス確認しないといけませんからね。
ということで、この手間を省力化&効率化するために生まれたのが、いまよく使われる「二重ワク」方式なんじゃないかと私(ケ)は推測しています。二重ワク方式の場合、入った文字でできる言葉さえ書けば応募できますし、正解不正解のチェックも簡単ですものね。
もっとも、二重ワク方式、いつごろどこで始まったのかをちゃんと調べたことがないので、いつかきちんと調査してみたいものです。

ちなみにニコリでは、クロスワードの懸賞用二重ワクの配置には、2つの原則を定めています。
・二重ワクのマスは、タテヨコ両方の言葉とからむマスにする
・1つの言葉に、二重ワクのマスを複数入れない
1つめの原則は、言葉の絡みで解くクロスワードの特性を活かすためのもの。片方の言葉が思いつかなくても、そこに交わるもう1つの言葉がわかれば答えられますからね。
2つめの原則は、二重ワクのマスが一気に判明しすぎるのを避けるため。これはクロスワードをなるべく長く楽しんでもらいたいからです。
特別な事情がない限り、二重ワクの位置はこの原則を守っています。

さて二重ワク方式は、送る側も受ける側も手間が減らせますが、その一方で、二重ワクの部分さえ解ければ応募ができてしまいます。それじゃ納得できない、ぜんぶ解いた人でないと応募できないようにしたい、と出題側が考えたとしても、それは無理からぬことですよね。
クロスワードをすべて解かないと回答できず、しかも応募や確認の手間が少ない方法。そんな方法が果たしてあるのでしょうか。
というと、実はあります。
そのうちの1つが、「ある特定の文字を数えさせる」方法です。
この方法、今でも「夕刊フジ」や「サライ」のクロスワードで使っています。「夕刊フジ」ならば、あるカナ(毎回変わります)の数、「サライ」ではサ・ラ・イの3文字の総数。これらを答える方式です。
これならば、盤面に文字をすべて入れないと、何文字あるのかがわかりませんから、最後の1文字が埋まるまで解きますよね。

とはいえ、最後に言葉が出てくる二重ワク方式は、これはこれで「最後のごほうび」的な楽しさがあるので、やはり優れた方法なのだと思います。それになによりわかりやすい。懸賞問題ではないクロスワードの問題でも、二重ワクで言葉が出てくるようにして欲しい、という注文はよくあるのです。最後に言葉が出るか否かで、達成感が変わってくるというところでしょうね。

ちなみにニコリの「e-クロスワード」、もちろん懸賞問題に使えますよ。盤面を完全に埋めたら応募できるようにも、二重ワクさえ埋めれば応募できるようにもできます。どちらの方式にも対応可能なのです。やるじゃないですかe-クロスワード。

なるべくぜんぶ解かせたい要望と、二重ワク方式。
両立は可能でしょうか?
じつはこれ、可能なのです。
二重ワクの数をなるべく増やして、盤面全体にまんべんなくちりばめればよいのです。そうすれば、二重ワクをすべて埋めることで、盤面はほぼ完成されますからね。

ということで、二重ワクたっぷりのクロスワードを作ってみました。
7×7マスの盤面に、二重ワクは13個。
先ほども触れた、ニコリでの二重ワク配置の原則に従い、また黒マスも二重ワクのマスも対称配置にした場合、7×7だと13マスが最大みたい。14マス入る配置があれば教えて欲しいです。

それではまた次回。