今週の雑記係 (焼)です。
「フ」から始まる好きな食べ物は「フライドポテト」です。
最近、急に寒くなってきましたね。
こういうときは、密室のなかで暖をとりながら、
密室トリックについていろいろ考えたくなるのではないでしょうか…?
ということで「ミステリーをパズルする」~密室トリック編~
今回も始まりました。
前回までのあらすじ
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密男くんが密室に閉じ込められた!
同じ部屋には人語を操るライオンがいるぞ!
なんとかしてこの部屋を抜け出さないと!
しかし、今の段階ではまだ筆者は
脱出方法を思いついていない!
はたしてどうなってしまうのか!
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~教室の中~
密男くんは高速移動や分身の術を駆使しながら、
ライオンの猛攻を避けていました。
密男
(…今はまだ素早さがまさっているオラが、
攻撃を紙一重でかわしているが、
体力はライオンのほうが上…。
このままではいつか捕まってしまう…
一体どうすれば…)
教室の戸は2つありますが、
後方の戸は鍵がかかっていて、
前方の戸はつっかえ棒で開けられなくなっています。
つっかえ棒を外せば戸を開けられるかもしれませんが、
ライオンはそんな隙を与えてくれません。
戸以外の出口もありません。
何の打開策も見つからない密男くんは、思わずつぶやきました。
「…もっと密室のことを知っていれば、
ここから抜け出せたかもしれないのに…」
すると、ライオンの攻撃がぴたりと止まりました。
ライオン
「密室のことが知りたいのか…」
密男
(…なんだ、ライオンが密室のことを
教えてくれそうな雰囲気を出しているぞ…?)
「知りたいかも…」
ライオン
「そこまで言うなら仕方がない!
冥途の土産に教えてやろう」
ライオンのしっぽがピンッと立っている。
密男
(…そんなにしゃべりたかったのか)
ライオン
「第1回を見ていたら、もう知っているかもしれないが、
密室トリックは大きく3つに分けることができる」
(1)「かける」トリック
…鍵をかけるなどで密室状態を構築するトリック
(2)「たもつ」トリック
…密室状態を保持したまま室内になにかをするトリック
(3)「みせる」トリック
…密室状態を確認させるトリック
ライオン
「『かける』トリックは第3回で説明しているから、
今度は『たもつ』トリックについて説明しよう。
多くの場合、密室トリックは誰かに見てもらって初めて成立する。
『かける』トリックを使って密室を構築したとしても
そのあとそれが保てていなければ、何も意味がない。
たとえばこんな感じだ」
密男
「確かに…」
ライオン
「そこで登場するのが『たもつ』トリックだ。
『たもつ』トリックは大きくわけると3種類ある」
(1)密室を保った状態で、外側から内側へ何かするトリック
(2)密室を保った状態で、内側から外側へ何かするトリック
(3)密室を保った状態で、何もしないトリック
ライオン
「たとえば(1)は、鍵がかかった部屋の外側から内側に
ビームを放つことで密室状態を保ったまま目的を果たすとか…」
ライオン
「(2)は、鍵がかかった部屋の内側から外側に
隠し扉を使って脱出するとか…」
ライオン
「(3)は、鍵がかかった部屋のなかで
体育座りをして待つとかだな」
密男
「…えっ、(3)だと密室トリック成立してなくないですか?」
ライオン
「たとえば隠れておく方法がある。
部屋のどこかに隠れておいて、
鍵が開いた後に隙を見て抜け出せばいい。
この方法は『見せる』トリックに
近いかもしれないがな」
密男
「なるほどね…」
―そのとき、密男の脳髄に電撃的なものが走りました!
密男
(…この方法ならこの密室から脱出できるかも…!)
じつはさっきからずっと続いていたライオンの攻撃を避けながら、
密男は教室の前の黒板にゆっくりと近づくと、
2つの黒板消しを手に取り、バンバンってしました!
黒板消しから出た粉塵で、辺り一面が真っ白に!
まるで何も描かなくてよい、楽な1コマのようです!
ライオン
「なんてことだガオ!
とにかく前方の戸を死守しなくては…!」
周りが見えないなか、前方の戸の守りを固めるライオン。
しかし、そのとき後方の戸のほうから
ガラガラッ!
と戸が開く音がしました。
ライオン
「バカな! 後方の戸には鍵がかかっているはず…」
後方の戸に駆けていくライオン。
しかし、後方の戸は開いていません。
代わりにその近くにはスマートフォンが落ちていて、
何やら音が流れていました。
――今日はよく『密殺教室』に来てくれたガオー。
ライオン
「…これは第3回の講義のときの…?
はっ!」
前方の戸を見るライオン。
ライオン
「やられた…」
そう、密男くんは講義の内容を一言ももらさぬように
講義が始まる前からスマートフォンで録音していたのです。
先ほどの「ガラガラッ」はそのときの録音を流したものでした。
ライオン
「追わねば…」
そう言うと、ライオンは前方の戸のつっかえ棒を外し、
戸を開けて教室の外へと駆け出していきました。
ライオンが教室から出ていく姿を見ていた密男くんは、
ほっと息をつきました。
そう、密男くんはまだ教室の中にいました。
天井の四隅の端っこに張りつくようにして隠れていたのです。
密男
(…よかった…うまくいった。
後方の戸にライオンを近づけたとしても、
前方の戸から無事抜け出せる確証はなかった。
だから隠れてやり過ごすことにした。
前方の引き戸がつっかえ棒で閉じられているのも幸いだった。
つっかえ棒は前方にある引き戸のうち、1枚しか閉ざしていない。
もう1枚はつっかえ棒を動かさなくても開けることができる。
だからライオンは、つっかえ棒が何も動いていないのを見ても
不自然に思わず、オラが外へ出たと思ったのだろう。
部屋に隠れてやり過ごす…。
ライオンに教えてもらった講義が役に立った…)
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こうして無事、ライオンの密室から抜け出した密男くん。
帰ってフライドポテトを食べたそうですよ。
いやあ、それにしても密男くんが
偶然、講義を録音してくれていたり、
偶然、天井に張り付く能力があったりしてよかったなぁ…。
ということでまた次回。