今週の雑記係 (焼)です。
好きな芋料理はフライドポテトです。
密室トリックについてパズル的に考えていく(つもりの)コーナー第3回です。
~~前回までのあらすじ~~
ライオンという脅威から身を守るために
密男(みつお)くんは「部屋」や「鍵」
という概念にたどり着きました。
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今回の密男くんは、部屋をより
安全にするために「密室」の
構築方法を学ぶようですが…
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安全な部屋を手に入れた密男くんは今日も宅配サービスを使って、おうちで幸せなフライドポテトライフを過ごそうとしていました。
カタン…
そのとき、郵便受けに何かを入れる音がしました。
確認すると、それは1枚のチラシでした。
「密殺教室…?」
読んでみるとどうやら密室殺人についての基礎知識が学べる塾のようです。
「まぁ、オラには関係ないか…」
密男くんがそう思って捨てようとしたとき、「体験者の声」の一文が目に入りました。
「この教室のおかげで、部屋を強固な密室にできてライオンにおびえなくてもよくなりました!」
密男くんの心によみがえるライオンの恐怖…
「停滞は後退だ…」
そう低く呟くと、密男くんはコートを手に取り
外へと駆け出して行きました。
密男くんはチラシに書いてあった時刻どおりに教室に到着しましたが、まだ誰もいませんでした。
密男がとりあえず席に座って待っていると、教室の前の引き戸がゆっくりと開きました。
教卓についた謎の人物(?)は語り始めます。
「今日はよく『密殺教室』に来てくれたガオー。教師を務める元本レオ(もともとレオ)だガオー。よろしくガオー」
密男くんは変わった語尾の先生に少しとまどいました。
ただ、語尾に「ニャー」とつける店員がいるメイド喫茶もあるというし、語尾に「ガオー」とつける先生がいる塾というのもあるのだろう、世の中は広いと考えることにしました。
「オラは密男と言います。よろしくお願いします」
「密男くん、早速だけど『戸』を開かなくするにはどんな方法があるガオ?」
密男くんは自信たっぷりに答えました。
「鍵です!」
「その通りガオ。…でもそれだけガオ?」
「えっ…」
鍵以外の答えを持ち合わせていない密男くんはだまり込んでしまいました。
「そんなに難しい話じゃあないガオ」
すると先生はたてがみの中から長い棒を取り出し、教室の引き戸のレールの上に寝かしました。
「こうするだけで棒がつっかえになって、引き戸が開かなくなるガオ」
「おぉ…」
今まで鍵以外の閉じ方を知らなかった密男くんは驚きのあまり、開いた口がふさがらなくなってしまいました。
「鍵以外にも戸にはいろいろな閉じ方があるガオ。一覧にまとめてみたから見てほしいガオ」
そういうと先生はたてがみのなかから一覧を取り出しました。
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密室の構築方法の分類《物理面》
・鍵
最もメジャーな密室構築方法のひとつ。戸自体やその周辺に閉めるための機構として存在する。外鍵、内鍵、オートロック、南京錠、カードキー、生体認証などいろいろな分類・種類がある。・ドアロック
チェーンロックやU字ロックなど。人が通れない程度に開き具合を限定する。・つっかえとなるもの
用心棒やカンヌキなど。引き戸のレールに長い棒を寝かせるのもこれに分類できる。・重いもの
戸の前などに重いものなどが置かれていて、開かないという場合。戸自体が重いパターンもある。
・くっつくもの
接着剤や磁石などで戸がくっついていて開かないという場合。・押さえつけるもの
空気圧、水圧、人やロボットの力などが押さえつけているため、戸が開かない場合。・拡大・縮小
戸自体が大きくなったり、戸の周りが小さくなるなどで戸が開かない場合。・触れないもの
戸に高圧電流がながれているなどで戸に触れない場合。・一定の条件
体重制限や門番による顔の確認などがある場合。《心理面》
・痕跡
戸を開けることはできるが、そのときに痕跡が残ってしまうため開けることができない場合。
たとえば、戸と壁の間に細い紙がはさんであって開けるとそれが落ちてしまうパターンなど。
また扉の前などに壊れやすいものが置かれていてそれを壊さずには開けられないパターンなどもある。・危険や忌避など
戸の前にライオンがいる場合や、戸を開けたら不吉なことが起こるという迷信がある場合など。
戸が貴重な文化財などで触りにくいなどもこれにあたる。・知識・知恵などが必要となる
戸の開き方にコツや謎がある場合。「引き戸」のように見えて、実は前後にひらく「開き戸」の場合など。
扉自体が隠されているパターンもある。===========
「このように密室を構築する方法はいろいろあるガオ。
もし密男くんが、より強固な密室を構築しようと考えているなら、鍵だけでは足りないガオ。
鍵以外の別の手段も併用しながら安心な部屋を築くといいガオ」
「先生…ありがとうございます…」
気づくと密男くんの目からは熱いものが流れていました。
「君が喜んでくれたら私もうれしいガオ」
密男くんは感激して質問します。
「なんで…先生はそんなに心が大きいのですか?」
「それは…」
「お前をたべるためガオオオオオオ!!!!!」
「ぎゃああああああああああ」
誰が予想したことだろう、あの聖人君主のような先生がまさか人々を食らうライオンだったなんて…!!!(迫真)
密男くんは教室の後ろの引き戸まで走りました。
しかし、その引き戸には鍵がかかっています!
ライオンは不敵に笑っています。
「ふふふ…密男くんは足が速くてすぐ逃げてしまうから密室に閉じ込めて食べさせてもらうことにしたガオ。
この密殺教室を開催するために人間の言葉も習得したガオ」
「なんという執念だ…」
密男くんは困惑しました。
教室にある戸は2つだけ。それ以外の出入り口はありません。
後ろの戸は閉まっていますし、前の戸は長い棒がつっかえになっています。
棒を外せば戸は開けられるでしょうが、ライオンはそんな隙を与えてはくれないでしょう。
密男くんは生きるため、そして再びおいしいフライドポテトを口いっぱいにほおばるため、頭をフル回転しはじめたのでした…。
(つづく)