文章・座談まとめ人:(塚)
パズルについて編集部が気楽に語り合う「パズル座談会」の第3回です。
11月発行の『漢字パズル百花繚乱』や、最新刊『パズル通信ニコリ165号』の「漢字を遊ぶ」特集など、ここ最近はどうも漢字パズルが熱いぞ、ということで、今回は「漢字パズル」という広いくくりでやってみました。


 

:ニコリ165号の漢字特集は、定番じゃないものもたくさん集まっていて、新鮮な感じですね。
:単発ものの投稿がいつもより多かったんですか?
:特集向けパズルとしてはどうなのかわかりませんが、漢字のパズルという意味では普段より単発ものが多かった感はあります。ただ、厳密さに欠けるかな、というものもけっこうありました。
:そのへんは漢字パズルの難しいところですね。
:漢字はねぇ…。
:その言葉があるとかないとか言い切れないっていうところの難しさがありますよね。
:どの範囲までの言葉を許すかっていう基準は、難しい気がします。
:言葉系のパズルならではだね。
:たしかに、ありますよっていうのは楽だけど、ないですよっていうのは言いにくいですもんね。
:あと、「その部品は同じなのかどうか」みたいなところとか。
:部品の分解ものはそこですよね。
:厳密に言えば違うけど、一緒にしちゃうみたいなことはあるのかなぁ。「くち」と「くにがまえ」とかね。
:形がたまたま一致しているものを、同じと言い切るかどうか。
:かといって、そこを厳密にわけたら楽しくなるのかといったら、そういうわけでもないですよね。
:図形と割り切っちゃったほうが、解く人は楽しいのかなっていう気はする。
:あと、見えかくれとかのパズルで特にそうなんですけど、書体による文字の形の違いに縛られるっていうのは、解いていて気になることはありました。「法令」の「令」とか、手書きの文字と印刷用の文字で違ったり。
:ところで、私たちは何文字くらいの漢字で生活しているんでしょうね?
:JIS第二水準まででどのくらいでしたっけ?
:6000字くらいですね。
:じゃあ、中国人はいったい何文字くらいで暮らしているんだろうか。
:中国にも漢字パズルってあるんですかね?
:あるでしょうね、きっと。
:クロスワードなんかは、漢字でやるしかないんじゃない?
:漢字を入れるのか。でも見たことないなぁ、シークワーズとかも。想像がつかない。
:でもすごく興味がある。
:中国でもニコリの本を売っているし、パズル文化はあるはずだよね。だけど、そこでみんなが英語のクロスワードをやっているとも思えないしなぁ。
:中国語のパズル事情について詳しい人がいたら、ぜひ教えてくださいってことで。


 

◆漢字で謎解き・フリースタイルクロスチック
:では、ここからは具体的なパズルについて話していきましょうか。
:あえて定番じゃないのを話してみるとか。例えば、『漢字パズル百花繚乱』に載っている「漢字で謎解き!」とか、作った方々はどうでした? 漢字でもできるもんだなぁ、とは思いましたね。
:漢字はいろいろな側面を持っているじゃないですか。画数とか、部首とか、読み方とか。数字はシンプルで、それが逆にパズルに向いているっていう話もあるとは思うんですけど、漢字の場合はそれ自体でいろいろごちゃごちゃできるので、それが謎解きとは相性がよかったのかもしれないです。
:私は、謎解きは漢字に限らずほぼ言葉系パズルなんじゃないか、という説を唱えていまして。
:謎解きそのものがってこと?
:言葉のパズルと謎解きって、大部分共通していると私は思っていて、謎解きって大体、言葉を解答させるし、論理的な厳密性じゃなくて知識や常識に依存して解くというのも同じなんですよ。
:たしかに、数字系じゃないっていうものは多いかも。
:それと、「フリースタイルクロスチック」の漢字バージョンも面白いですね。これは、もう1問の「漢字で謎解き!」といっても差し支えないと思います。
:確かに謎解きっぽいよね。
:言葉のカギをつけなければ、さらに謎解きっぽくなるんじゃないかな。
:文字のリストと、「これがつながりを示しています」だけでも、なんとかできることにはできそう。かなり難易度は上がるけど。
:謎解きとして、ぜひ次の『エニグマ』に。
:作者としては、今回でだいぶネタを使い切った感があります(笑)。あと1回くらいなら、できるかもしれないですけど…。
:最初に案を出したときは、「一発ネタだ」みたいなことを言っていたと思うんですけど、よく3つも作れたなぁと。
:なんか、1つのジャンルが出来上がってきた感じがありますね。

◆漢字見えかくれクロスワード
:話は変わりますけど、『百花繚乱』の中で「漢字見えかくれクロスワード」もありましたね。
:言葉のヒントをつけなくていいっていうのは開放感があって、意外と長い言葉を入れられたから、作っていて自分でもびっくりした。
:交差のマスは、もっと隠すこともできるのかなぁ、とも思いました。そのほうがパズル度は増すのかな。
:いっそのこと、真っ白のマスがあってもいいんじゃないかなぁ、とも思いました。そうすると、「一」や「乙」が使えるようになるんですよ。
:たしかに、ところどころはあってもいいかもしれない。
:今回初登場のパズルっていうわけではないんですよね?
:昔にもありましたよ。
:ただ昔よりも、発展性がちょっと見えたなっていう気はして、もう一回くらいはどこかで…とも思っています。
:問題が進むごとに、だんだん隠れているところが多くなっていくのもいいかもしれないですね。
:あと、作りながらちょっと思ったんですが、同じ漢字が複数あったときに、同じ隠され方をしていると、解く人は興醒めかなぁ、と。「人」とか「八」とかは、3つ目はどうしても同じ隠し方になっちゃうから、2つまでしか使えないなぁ、とか考えたり。
:漢字の隠し方について語れる人はあまりいなそうですね。見えかくれでしか使わなそうな技術だし。
:いつも漢字をかくす作業をやっているけど、同じ漢字は、極力違う隠し方にしてる。

◆漢字あぶり出しパズル
:「漢字あぶり出しパズル」は久しぶりに見ました。新聞などの媒体でも、しばらくやっていなかったので。
:作ってみたら、意外と面白く作れるなぁと思いました。
:いつだったか、誰かが「ダミーの漢字を考えるのが面倒くさい」って言っていたんだけど、そこを作業として面倒と思うか、そこも楽しいと思うかで、違うんじゃないかなって気がする。
:同じ読み方なのに全然違う漢字を入れてみたりとか。
:昔、なにでやったか忘れたけど、全部を都道府県の名前にした問題があって…。
:あれは、放談会の早解きのやつだったと思います。
:そうです。で、この方向性は、一発ならありだなと思った。
:ほうほう。
:都道府県名に使いそうな文字がたくさん入っているんだけど、できるのは一組だけで。
:「沖縄」の「沖」だと思ったら「冲」だった、みたいなね。
:あとは「縄」だと思ったら「蝿」でした、とか。
:それは面白いですね。
:あれはすごく新鮮だったんだけれども、こちらの方向に発展していくと違うものになるよなぁ、とも思った。
:通常のあぶり出しと同じ形式で、部品に分けて拾っていくっていうのはどうですかね?
:新しいパズルの提案ですか。次ニコでも実験パズルコーナーをやってみる?
:文字のあぶり出しとか考えずに、盤面を小さくしてやってみるとか。
:もはや違うパズルだなぁ。
:あぶり出しパズルは、そんなに手間をかけずに絵を出せるところがいいと思うんですよ。
:ただ、どうしてもある程度の大きさが必要になっちゃうんだよね。
:まあそこはありますね。でも直感的にわかりやすいし、絵が出る系パズルのわりには知識に訴えかけるところもあるから、そういうほうが好きな人はやる気になれるのでは。

◆ネット漢字
:「ネット漢字」は、もとの「ネットワーズ」で絵だったところを漢字にしたことで、パズルとして量産のきく収まりのよいものになったな、という感はあるんですよ。
:面白いですよね。
:あと、イラストにできない言葉はネットワーズだと使えなかったじゃないですか。
:他と共有していないところの文字が、絵だといくらでも別解がありそうで怖いけど、漢字だったらまあ絞れるから、そういう部分に関しては漢字のほうが強い。ただ、大きい問題だとちょっと飽きるかな、というところもあるかも。あと、作るのはけっこう大変。
:最後の辻褄合わせのところですよね。
:最後の2行くらいのところで「あれ?」って気づくんですよ。「そんな4文字の言葉はない」って。
:あと、全体の質感を揃えたいというか、1個だけやたら難しい言葉というのも入れたくないじゃないですか。
:そうそう、ここにきてそれはないだろうみたいな。
:でも、小さい気楽な漢字パズルとしては、汎用性がある気はする。小サイズで月に1回の連載とかならいいよね。


 

…ということで、いくつかの漢字パズルについて語ってきましたが、座談会はこのあたりでタイムアップ。『漢字パズル百花繚乱』や『パズル通信ニコリ165号』には、ここで取り上げた以外にもたくさんの種類の漢字パズルが載っているので、お気に入りを見つけてみてはいかがでしょう。