2025年、日本クロスワード百年の年も、もうすぐ終わります。昨年からずっと、一世紀前から始まる歴史の話をし続けてきました。
過去の話はもう充分、ということで、未来に目を向けてみましょう。
クロスワードの未来は、どうなるでしょうか。

なにやら壮大な出だしにしてしまいましたが。
出版業界の縮小は長いこと続いていますが、さすがに、紙のメディアがいきなり全部なくなるのはありえないでしょう。
比較的安価で、取り扱いが簡単であり、また電源も不要で、しかもちょっとやそっとじゃ利用不可能にはならない紙メディアは、この先、百年たっても、完全になくなることはないんじゃないかなあ、と考えています。
特に、クロスワードを始めとするペンシルパズルは、紙の上でエンピツで解く、というやり方から離れられない人が多いと思います。そういう人がある程度いる限り、たとえ新聞や雑誌がなくなっても、紙メディア上のパズルは、書籍など何らかの形で生き残り続けるでしょうね。
十年後や二十年後にも、新聞や雑誌にはクロスワードパズルが載っているのではないでしょうか。その絶対数は減っているとしても。

とはいえ、紙メディアの対抗馬である電子メディアの発展が、パズルの形を変えていくのも確かだと感じています。いま、ニコリ自身が、e-数独やe-クロスワードを開発し、またパズコミュを立ち上げて、電子メディア上で解けるパズルを推進しています。この流れが止まってもらっちゃ困りますし、どんどん大きく成長させていきたいのです。
だから、近い未来には、今よりもずっと多くのペンシルパズルが、パソコンやスマートフォン、あるいはそれに代わる電子メディア上で解かれるようになっていくでしょう。

ただ、電子メディアの弱点として、大きなサイズのペンシルパズルを扱いにくい気がするのですね。
15×25マスのビックロを、スマホ上で解くのは、やっぱりキュウクツそう。39×31マスのビックロ・ザ・ジャイアントだと、もっと大変でしょう。
部分部分で解けばよいクロスワードでさえそうなのです。全体のつながりを把握しないといけない種類のペンシルパズルだと、大サイズを解くためには、デジタルデバイスそのものが障壁となりそう。
という意味のことを編集部内で口にしたら、(や)が「キンドルスクライブは有望ですよ」と教えてくれました。実際に(や)はユーザーなのです。見せてもらうと、かなり画面が大きいので、ニコリ本誌に載っているジャイアントサイズでもあまり不自由せず解けそうです。こういうものが普及する未来になれば、電子メディア上のペンシルパズルは、けっこう安泰なのかも。

クロスワードを、電子メディアで解くのが世の主流となったなら、どんな変化が訪れるのでしょうか。
私が予想している変化としては「カギ番号の消失」。クロスワード盤面に振られている数字がなくなるのです。
白マスに振られているカギ番号は「このマスを1文字目とする言葉」と、ヒント文章中の対応するカギとを、1対1に対応させる役割を持っています。
しかし、電子メディア上の問題では、盤面の埋めたい部分をクリックやタッチすることで対応するカギを呼び出すことが可能ですし、それぞれのカギから盤面の対応する場所へジャンプさせることも可能です。
つまり、盤面とヒントを結びつけるために、カギ番号を介在させる必要がなくなるわけです。
もしも「カギ番号の消失」が現実になると、頻出質問の一つ「クロスワードの盤面にある番号って、どうやって振るんですか」も出なくなるのかなあ。「番号ってタテ振りが正しいんですかヨコ振りが正しいんですか」という質問もなくなりそう。ちなみに片方が正しくて片方が間違い、ということではないですよ。

カギ番号が消失したクロスワードでは、それぞれのカギは必要に応じて可視化されるので、「カギが番号順にずらりと並んだヒントスペース」も消滅するのかもしれません。そうなると、カギのフォーマットで見せるタイプの仕掛け(文字数をそろえるのが好例ですね)は、アピール力を失って淘汰されそうです。

電子メディア上のクロスワード、画像や動画をヒントに利用するハードルは低くなるかもしれません。そうすると、今とは違った味わいの作品もいろいろ登場することでしょう。これは楽しみな未来じゃないかな、と個人的には思います。

妄想はさまざまに広がりますがこの辺でとどめるとして、今月の問題をどうぞ。
過去の「未来予測」をテーマにしてみました。レトロフューチャーというやつ? 私がSF好きなので、傾向がそっちに寄っているのはご容赦。

ではまた次回。(ケ)

(次回は2026年1月28日更新予定です)