いまだエアコンから涼しい風が流れているニコリオフィスより、(あ)がお送りします。

東京でも朝晩の涼しさが感じられるようになっていて、朝晩の通勤途中に見かける虫たちもなんだか元気そうに感じる日々です。

数日前に、隣家のご婦人から
「さいきん、道を歩く黒い芋虫をよく見るわねぇ、なんの幼虫かしら」と、話しかけられました。

ご婦人は、数年前に私がナミアゲハやルリシジミの幼虫を熱心に飼育していたのを見ているので、あなたの好みに会う芋虫かもしれないわよ、と情報提供してくれたのかもしれません。

道端でよく見かける芋虫だったのですが、その時の私は、
「黒に黄色の点がある大きい芋虫ですよね。きっとなんてことない蛾の幼虫ですよ。」
と、味気ない返答をしました。
育てるならきれいな蝶の幼虫を育てたいというのが本音だったからです。

しかし、連日このなんてことない芋虫と出会ううちに、この子の名前を調べてみようとふと思い立つことになります。

Googleレンズで調べると、「セスジスズメ」という名前の蛾であることがわかりました。
蛾です。やはり育てたいとは思えません。
しかし調べるなかで「夕顔別当」という初めて見る単語に行き当たりました。夏の季語のようです。

ニコリにある歳時記で「夕顔別当」を調べたところ、
スズメガ科の仲間たちは夜に咲く夕顔の蜜にあつまるようで、「夕顔別当」という呼ばれ方もすることがわかりました。さらに、幼虫は芋虫である、と書いてあります。
(『角川俳句大歳時記・夏』調べ)

蛾の幼虫は「芋虫」か「毛虫」なので、「芋虫」であるのは分かるのですが、わざわざ「芋虫である」と断定してあるのが気になりました。

そこで歳時記で「芋虫」を調べました。
毛のない蝶や蛾の幼虫のことが芋虫で、芋の葉を食べるから「芋虫」と言われるが、芋の葉を食べるのはスズメガの幼虫、と紹介されています。つづけて「ほかにも柑橘類の葉をたべるものもいて~~~揚羽蝶の幼虫で柚子坊ともいう。」とも書いてあり、ナミアゲハの幼虫よりも、芋虫の中心はスズメガであると(あ)は解釈しました。(『角川俳句大歳時記・秋』調べ)

つまり、セスジスズメはじめスズメガの仲間たちは、幼虫時代は「芋虫界を代表する、芋虫の中の芋虫。」で、成虫になったら「夕顔別当」という雅な異称をもつ蛾なのです。

隣家のご婦人に、このことを伝える機会はないので、この場を借りてセスジスズメに「なんてことない芋虫」と言ってしまったことを訂正したいと思います。

「あの黒に黄色の点がある大きい芋虫は、ほんとうの芋虫です。芋虫の代表格ですよ。」と。

ニコリに入社するまで歳時記は手に取ったことがありませんでしたが、眺めるだけで面白いなあと思う(あ)なのでした。

余談ですが、ニコリのキャラクターであるホイさんは、ジャガイモ由来の名前であることからスズメガの幼虫かもしれません。