どうも(ケ)です。
この「クロスワードのいろいろ話」も、今回で連載50回目。そんなにやってたんだなあ、と我がことながら感心してしまいました。
50という数字で、ふと思い出したのですが。
私がはじめて『パズル通信ニコリ』にクロスワードを投稿して掲載されたのが、50号だったのでした。今から30年ほど前の話。
30年後の自分が、日々クロスワードを作ってお給料をもらうようになってるとは、そのころはもちろんまったく想像しておりませんでした。
なぜクロスワードを作ってみようと思ったのか、は説明が難しいのですが、まあある種の衝動によるものです。ともかくも、そのときクロスワードを作ったのが今現在につながってるので、衝動に身を任せるのも悪いものではありません。
今回は「クロスワードを作る」という衝動についてのお話。
もう何度もなんども書いておりますが、今年は、クロスワードが日本に登場して百周年です。しつこいですがお許しください。
さて、百年前の大正14年、サンデー毎日やアサヒグラフなどの雑誌には、クロスワードが毎週載せられていたのですが。
それらのクロスワードの中には、読者が投稿してきた作品もあったのです。
当時の誌面には、読者からの応募作に、編集部で多少のアレンジを加えた上で出題している旨が書かれています。サンデー毎日でもアサヒグラフでも、投稿作品が掲載されています。
しかも、クロスワードが初登場した大正14年3月から、さほど月日も経過していない時期に、すでに投稿作品が見うけられます。
これは、何回かクロスワードを解いているうちに、自分も作ってみたくなった人がいた、そして見事に完成させて投稿した人がいた、ということですよね。おそらくは制作の手法も自分で編み出して、完成させるに至ったのでしょう。それだけの努力をさせた、創作への意欲に頭が下がります。
そして、クロスワードは登場当初から、それだけの衝動を育てさせるエンタメコンテンツであったわけです。
これは日本に限った話ではなくて。
『遠山顕のクロスワードの謎』(遠山顕、NHK生活人新書)によれば、クロスワード発祥の地・米国でも同様だそうな。
世界初のクロスワードを載せた「ニューヨーク・ワールド」紙。1913年12月のクロスワード誕生からほどなく、読者の投稿作品が舞いこみはじめていたそうです。そして翌年2月には、読者の投稿パズルを掲載するようになったのだとか。初期には週平均6作品ほどだったのが、1年後には25作品にもなったといいます。
みんな、解いておもしろいと思ったからこそ、自分でもクロスワードの問題を作ってみようと思ったのでしょうねえ。
その状況は、現在でも同様。
米国の大手新聞「ニューヨーク・タイムズ」紙。
その紙面に掲載されているクロスワードは、歴史も長く、世界的にもよく知られているクロスワードです。それを担当しているのは、クロスワード編集者としてこちらも名高い、ウィル・ショルツ氏。
そのNYタイムズ紙の問題も、投稿作品によって支えられているのだそうです。週に60~75作ほどの応募があるのだとか。それをチェックし編集し載せているのですからショルツ氏も大変でしょう。
このように。
クロスワードを解いているうちに、クロスワードを作りたくなってしまう人が、古今東西絶えなかったわけです。
これは、なにかを作るという衝動が、人間にとって根源的な衝動の一つである現れじゃないのかな。
もの作りの衝動は、今の社会を見ても、とても大きなものであるのは実感できますよね。日々、数え切れない人たちが、新たな作品を生み出し続けています。その作品たちが、我々の文化を成長させ豊かに発展させていくのです。
衝動に身を任せるのも、悪いものではありません。
それではここらで、いつものようにクロスワードの出題。
今回は「つくる」をテーマにしています。
さて。
ニコリでは、クロスワード日本登場100周年を祝い、この11月に記念本を出版する予定です。その記念本に掲載するクロスワードの投稿を、読者のみなさまから募っています。詳細は『パズル通信ニコリ』をご覧くださいませ。
締め切りは6月末なので、まだまだ間に合いますよ。
そしてこの機会に、これまでクロスワードを作ったことがない人にも、ぜひチャレンジしてみていただきたいのです。
ということで。
近日中に、ニコリでは「クロスワードの作り方」を解説した動画を公開する予定です。その動画が、クロスワード作りの第一歩を踏み出すきっかけとなったなら、たいへんにうれしくありがたいことです。
あなたが、クロスワードを作れるようになることを、期待していますね。
ニコリの(ケ)でした。
(次回は2025年6月25日更新予定です)