幼いころから、怪獣が好きでした。
親に連れられて、怪獣映画を含んだこどもむけプログラムを見に行ったり。テレビで放送される怪獣映画に釘付けになったり。怪獣が登場するヒーロー番組も夢中になってみていました。
そんなこんなで半世紀ほどが経って、こんな大人に育ってしまいました。どうも(ケ)です。
さて。
来年2024年は、映画『ゴジラ』公開70周年です。
ちなみに2004年12月には、50周年記念作品の『ゴジラ FINAL WARS』が公開されています。
2004年、二十年前の話になるのですが。
あるメディアに連載していたクロスワードで、ある回のテーマとして、ゴジラ50周年の問題を作るお仕事をいただきました。
先述の通り、怪獣大好きに育ちましたので、大好きな怪獣であるゴジラをテーマにしたクロスワード、大喜びで作りにかかりました。
ですが取りかかってすぐに、一つの難題が潜んでいることに気付いたのです。
いま振り返って考えてみると。
2004年の私は、こども向けの昭和ゴジラは何本も見ていました。けれど1954年の第1作『ゴジラ』は当時未視聴。「平成VSシリーズ」と呼ばれる、1984年~1995年の作品は、リアルタイムではないにしろそこそこ見ていました。「ミレニアムシリーズ」と呼ばれる2000年以降の作品はあまり見ていませんでしたが、気にはかけていました。
などとくだくだしい自分語りを思わずしてしまう程度には、ゴジラからいろいろと影響を受けてきましたし、やっぱり怪獣オタクだよな、とも自覚しています。もちろん自分の知識が未熟なのは重々承知しています。いま、自分のゴジラ歴を書きながら、「なんだその程度の薄い知識でゴジラクロスワードを作ろうとしたの?」とあきれられるんじゃないかなあ、などとヒヤヒヤしたりもしています。
そして、私が気付いた問題というのは、まさにそこに潜んでいたのです。
私が作ることを求められている「ゴジラクロスワード」は、いったい誰に向けて作るものなのか。
作り始めてすぐに、この問題はマニア向けに作るわけではなく、「怪獣映画は子どものころに見たことがあるよ」程度の人に向けて作らないといけないんだ、と気付けたのは幸いでした。
お仕事を依頼してきたメディアは、万人向けのメディアであり、解く人はゴジラにくわしいわけでもなんでもないのです。
マニアの本領を発揮して、あれやこれやのウンチクを盛り込み、マニアにしか解けないコテコテのパズルを作ることだって、やれと言われればできます。でもそんなものは望まれてはいない。
望まれているのは、怪獣の知識なんてまるでない人でも解くことができる問題。そして解いて楽しんでもらえる問題。
それでいて、この問題はまさにゴジラクロスワードだ、と解き手に感じさせる問題。
さらに付けくわえれば、ゴジラを知らない人に、ゴジラへの新たな興味をいだいてもらえるような問題を作らねばならないのではないか。
自分の中で、いろいろなハードルが高くなっていったのをよく覚えています。
とても好きな、そして世の平均よりはくわしいジャンルだけに、悩む部分も多々ありました。なによりも悩んだのは、マニア向けに寄ろうよろうとする自分を抑えること。マニアの悪弊として、自分の持つ知識をどうしても濃厚に盛り込みたくなってしまう。
どうすれば、偏りすぎずバランスよく、狭く深くなりすぎず総括的に、さらりとスマートにシンプルにそれでいて印象深くまとめられるか。
いろいろ悩みながら問題を作っていき、そして無事お仕事を終えられたのでした。
今振り返ると、まだまだ未熟でやりきれていない部分もあったなあ、とあれこれ反省点も浮かびます。
どんな人が解くのかを意識してパズルを作らねばならない。その大事な心得を学ぶ貴重な体験でした。
とまあそんなこんながあって20年を経て。
あまり成長せずに年齢だけ経たような気もするのですが。
今回の問題は、20年後のゴジラクロスワードです。
実は20年前の問題を母体にしているのですが、盤面は大改造といえるくらい手を入れました。ヒントはすべて新たに付け直しています。そのくらいしないと、この20年の歴史を盛り込めませんでした。
ゴジラ的には、この20年は、ずいぶんと濃い年月だったんだなあ、と実感しました。
そして今回もまた、マニア寄りになりすぎないように気をつけたつもりなんですけど、成功したのかなあ。どうなのかなあ。
今回はクライアントがいるお仕事ではなく、次ニコという自社メディアに載せるものなので、思いっきりマニア向けにしちゃってもよかったのかもしれません。けれど、まず解いてもらうのがパズルの第一義というスタンスに立ち、世の広い人に向けたパズルとして仕上げようと考えたのでした。
ではまた次回。