文章:(ケ)

伝統ゲーム大事典
子供から大人まであそべる世界の遊戯
高橋浩徳
朝倉書店
7,200円(税抜)

パズル通信ニコリ」で長年連載されている「高橋浩徳の遊んで遊ばれて」、読んでますか? 毎回いろいろなゲームが紹介され、その背景や文化などが紹介されていますね。

その高橋浩徳さんが、長年調べてきた世界各国の様々な伝統ゲームを集めたのが本書。およそ250種類ものゲームが載っている、おそらくは世に類のないゲーム事典。日本のゲームはもちろん、海外も含め、古今東西の多種多様なゲームが収録されています。

そしてこの本、「事典」と銘打ってはいますが、単なるゲームのリストではありません。その本質は「さまざまなゲームで遊ぶためのガイドブック」。ゲームというのは遊ぶもの、遊ばなければその価値がわかりません。

もちろん、それぞれのゲーム、その名称、ボードゲームやカードゲームなどの種類、遊ばれる地域、おおまかな内容、遊ばれる人数などで、体系的に整理づけられてはいます。しかしもっとも多く紙幅を割いているのは、そのゲームの遊び方。ゲームに必要な用具、準備、進行、終了と勝敗のつけ方などが、きちんと記され、実際に遊んでみることができるようになっているのです。

…と、書くのは簡単ですけど、実際にはこれは大変なことだと思います。なにしろ、おなじみの囲碁や将棋、これらの遊び方も、たった1ページの中にまとめなければならないのです。あの複雑な囲碁や将棋が、さらっとまとめあげてあるのには感心しちゃいます。

集められたゲームは「盤のゲーム」「札のゲーム」「サイコロ」「動作のゲーム」「スポーツのゲーム」「言葉のゲーム」など、10の大項目に分類され、その中でさらに細かい項目に分けられています。こうして分類してみると、世界各国で同じようなルールのゲームが独立に生まれているのもわかります。洋の東西を問わず、人間の考えることには大きな差はないんですね。そして、それぞれのゲームにはそれぞれの特徴があり、そこにおもしろさの多様性が生まれているのだろうなと考えさせられます。

などとつらつら述べるより、この本1冊を囲んで、みんなで実際に遊んでみるのが、よりよい利用法だという気がします。たぶんそこには、こんな楽しさおもしろさがあるんだという新たな発見があり、こういうときはどうするんだろう、こんなルールにしてみたらいいんじゃない、などという工夫も生まれ、コミュニケーションが広がっていくんじゃないでしょうか。遊ぶときの助けになるように、コピーして使えるゲーム盤やスコアシートのページもちゃんとあるあたりは、さすがゲームに通じた著者の面目躍如といった感じ。

高橋浩徳さんというと、テレビ番組にもなった「たほいや」というゲームを連想する人も多いでしょうが、それも「ディクショナリー」という名前でちゃんと紹介されていますよ。このほか、フラッシュ、テレパシー、五科事典などというパーティーゲームをご存じのかたも多いでしょうが、それらもしっかり紹介されています。

個人的にとても興味を引かれたのはゲームのイベントの紹介。「かくれんぼ大会」「十五夜綱引き」「マウスパッド投げ」「スコップ三味線」これらすべて、日本で実際に行われているイベント。どれも見たり参加したりしたくなってしまう響きではありませんか。

ゲームをもっと深く知り、さらに濃く楽しみたいかたにはぜひおすすめしたい一冊。ゲームの世界の広がりと質量に圧倒されてください。

朝倉書店の、書籍情報ページは以下。ここから購入もできます。
http://www.asakura.co.jp/G_12.php?isbn=ISBN978-4-254-50030-1