文章:(安)
お久しぶりでございます。最近はニコリの海外部門もやっている私です。
昨年あたりから、ニューヨークの学校(未就学児から高校生まで対象は幅広く)で、和服を着てペンシルパズルを教える機会をいただき、その話は約1年前のニコリ165号にも書かせていただきましたが、このたびは、(起)と2人でMoMathというところで、パズルイベントを2週連続で行ってきたのです。
MoMathは、あのMoMA(ニューヨーク近代美術館)とは別の施設ですが、国立数学博物館(the National Museum of Mathematics)ということで、パズル好きなら一度は訪れておきたい場所ですよ。マンハッタンの中心地に近く、立地も文句なしです。
そういう場所で、2度のイベントを行ったのですが、それぞれテーマがあり、1回目(10月5日)は“Japanese Puzzle Party”。土曜午後でおもにファミリー向け。数独(Sudoku)はアメリカでもすっかり有名ですが、今回は数独以外のニコリのパズルを6種類教えたのでした。
MoMathのイベント用会議室には数十名が集まり、家族連れや、イベントの常連客など多彩な顔ぶれ。
まずは(起)によるごあいさつ。通訳なしのカタコト英語で場が和み、本編の私へ。
私も同じように英語で説明できるかと思ったが、1分で挫折し、通訳さんの力を借りてパズル解説。教えたのは、カックロ、スリザーリンク、四角に切れ、ナンバーリンク、フィルオミノ、ぬりかべの6つ。それぞれどんなパズルかを説明しつつ、基本の解き方について解説。練習問題として、2011年に作った『ペンシルパズル入門』のパズルを楽しみました。説明聞かずに夢中で解き始める人がいたのは、日本でもアメリカでも同じですね。
ちなみに、さすがは数学博物館と言うべきか、会議室の壁はすべてホワイトボードとして書くことができるのでした。
その後、学校でのパズル授業の日々をはさみ、2回目(10月10日)は“The Story of Shikaku”。私が約30年前に考案した「四角に切れ」の誕生物語という、日本でもやったことがない話をしたのでした。
お客さんは、平日の夜ということもあってか、前回とはまた違った顔ぶれ。同じ人が何回も来るのかと思っていたので、少し驚きました。
四角に切れの発想の原点となったのは、当時のニコリ本誌に載っていた「裁ち合わせパズル」。ある図形をハサミでいくつかに切り、重ならないように並べ直して別の図形を作るパズル。この古典的名作「ギリシャ十字パズル」(十字型を正方形にしたりするパズル)と、当時のニコリに載っていた裁ち合わせパズルを実際に遊んでみたのでした。
四角に切れと違い、解くのにヒラメキが必要な裁ち合わせパズルにみんなで夢中になり、中学生くらいの少年が名解答を連発。四角に切れは、この裁ち合わせパズルから、「切って並べ直す」のうちの「切る」要素だけを抜き出したもので、これに面積の概念を加えて生まれたもの。裁ち合わせパズルを解くためには、図形の面積がわかっていると便利で、その面積を違う形で盛り込んだら、四角に切れになった、というところです。この説明でおわかりいただけましたでしょうか?
みんなでハサミを使って遊んだら時間がなくなってしまい、四角に切れを楽しむところまで行かずに終了。最近の本誌に載った「四角に切れ・ザ・スーパージャイアント」の盤面をチラッと見せたらみんな「ワーオ!」と驚いておりました。さすがアメリカ!?
かくして、MoMathでのパズルイベント2連発は幕を閉じたのでした。ニューヨーカーたちにニコリのパズルはどれだけ楽しんでもらえたのか、まだなんとも言えませんが、でも手応えはありましたぞ。