文章:(竹)
みなさま、「本誌」こと『パズル通信ニコリ』の最新号(記事執筆時)、165号はすでにゲットされましたでしょうか?
今回は、その記事の番外編をお送りします。

本誌165号に「ビジュアル系漢字発掘選手権」という記事があります。二三ページ。
まだ読んでいない方のために内容を説明すると、以下のとおり。
編集部スタッフ5人((い)(大)(川)(の)(焼))に、漢字の見た目に関する「お題」をいくつか出しました。そのお題に最もふさわしいと思う漢字を辞書などから1文字ずつ探してもらい、PR文を添えて提出してもらいました。提出された内容を(も)(竹)の2名で「審査」して、好き勝手に順位を決めました。

本誌では3つのお題について審査のようすを紹介したのですが、実は、その3つ以外にもお題を出していました。本誌では諸事情(ほぼスペースの都合ですが)でカットしてしまったのですが、もったいないので、「番外編」としてここに載せることにしました。
以下、誰でも読める記事(のつもり)ですが、本誌記事と合わせて読むとなお楽しめるのではないかと思います。よろしければお手元に本誌165号をご用意のうえ、ご覧ください。



 

竹「ビジュアル系漢字発掘選手権、番外編。お題は、
男子中学生に受けそうな、カッコイイ見た目の漢字
です。(も)が考えたお題ですが、発掘者の女性陣からは『男子の気持ちなんてわかんない』との声が多く上がりました。とはいえ、5人ともなんだかんだでちゃんと考えてくれたみたいで、
    
の5文字が集まりました」
も「いやいや、どれもいいとこ突いていると思います。みなさんわかってます。男子中学生が選びそう。だいじょうぶ。は漢字の豆知識ネタでよく見ますよね」
竹「『大漢和辞典』の最高画数、64画の漢字ですね。発掘者は(焼)。PR文が気合入っているので、全部読み上げます。画数・イズ・パワー。男子中学生はとにかく大きな数字が好き。ときにカードゲーム、ときにRPGで攻撃力が強いキャラや武器・防具を追い求め続けています。総画数64画を誇るこの字はそんな男子中学生の理想を体現したかのような漢字。しかも龍が四体! この龍は風・火・水・地の属性を持っていたり、東西南北をつかさどったりしているのでしょうか? 想像力がかきたてられます! そして何を隠そう私が中学生時代に一番好きだったのがこの漢字! 自分で描いた漫画の主人公の名前を『一(イッテツ)』にするくらいです!! …黒歴史
も「わはは。画数イズパワー。恥ずかしくていいなあ」
竹「ちなみに、漢字としては、言葉が多いとかおしゃべりとかいった意味です。次は、龍つながりでを見てみますか。こちらのPR文はシンプルです。龍だけでもかっこいい見た目なのにカスタムされているカッコよさ。間違いない! とのこと」
も「間違いない、ですか。断言しちゃいますか」
竹「発掘者は(大)です。確かに、四角(口)3つあたりにカスタム性を感じます」
も「規則正しく並んでいるのがいいですね」
竹「漢字としては、読みはレイ、リョウ。龍とか神といった意味があるそうです」
も「偉い龍なんですね。次。は同じ漢字なんですか?」
竹「同じといえば同じです。異体字の関係、といえばいいのかな。はいわゆる簡体字です。チョイスは似ていますが、選んだ2人のPR文はぜんぜん違いますよ。まず。発掘者は(い)で、PR文は3頭の犬をあやつり颯爽と登場する男。俺は世界を動かすんだ、ふはははは。メの部分を、爽の字と掛けたんですね」
も「なるほど。いいですね。ほんとうにそういう意味の漢字なんですか?」
竹「まさか。つむじかぜという意味です。音読みはヒョウ」
も「一瞬、そういう漢字かと信じかけました。うまい。『ふはははは』というコメントもはっちゃけてていいです。これ(本誌の記事の時点)までおとなしめなPR文だった(い)が、ここに来てこんなことを書くとは」
竹「のPR文も長いのですが、せっかくなので全部読み上げますね。男子中学生が何をもって『カッコイイ』とするのかがよくわかりませんが、風偏の伸び具合と犬3匹が颯爽とした感じで受けるような気がします。偏と旁を入れ替えても偏をとっても同じ意味ですが、風偏の格好良さでこちらがいちばんステキでしょう!! 発掘者は(の)。と違って、風の右下が伸びているところにも着目したんですね」
も「(い)も(の)も『颯爽』という部分は共通しているんですね。たくさん漢字がある中からたまたま同じような漢字を選んで、しかも同じようなとらえかたをするなんて、深いなあ」
竹「たしかに。このあたりも漢字のおもしろさといえるでしょうかね。最後は。発掘者は(川)です。これまた長いPR文ですが、この際なのでこれも全文読み上げ。『ククク…ばれてしまっては仕方がない…私の闇のオーラは常人にもわかるほど強く、隠しきれないようだ…。そう…ごく普通の男子中学生にしかみえないこの私…その正体は…!!』…とまあこんな風にですね。しがない男子中学生が非常にかっこよく微笑んでいる様子が脳裏に浮かんで焼きこびりついてしまったために選ばざるを得ませんでした。漢字の見た目は非常にシンプルで、ミニマリストが流行っている現代ならではのかっこよさを感じますね
も「見た目の『くくく』を文字通りに受け取ったと」
竹「後付けでしょうが、ミニマリストうんぬんのくだりもおもしろいですね。イマドキの男子中学生はイッテツなんかじゃない、こっち側じゃないか、という」
も「複雑な方向じゃなくて、シンプルな方向だ、と。ボカロ世代はこうだ、と。見た目が鉤爪やメリケンサックに見えるところもポイント高いです」
竹「メリケンサックはぜんぜん形が違うと思いますが、まあいいか。漢字としては、『川』の異体字です。さて、一通り審査しました。順位を付けますか」
も「うーん、どれも捨てがたいですね。(焼)の黒歴史を買って、を1位にするか…でも、漢字としては、この中ではありきたりといえばありきたりなんだよなあ」
竹「ではどっちが上ですかね。私は古風な人間なので、風をちゃんと書くのほうが好きですが」
も「いやいや、断然、が上です。男子中学生って、ほかの人が知らないことを知っているのを自慢しがちじゃないですか。のほうがドヤ顔できそう。風の中身って、メって書いてもいいんだぜ、って」
竹「ははあ、バカ正直に『ノ虫』って書くのは時代遅れなんだぜ、ということですか。それはあるかもなあ」
も「も悪くはないんですよね。実際の中学生にこの5文字でアンケートを採ったらこれかもしれない」
竹「ひとりだけ方向性が違うも、個性的という意味で推したいところ」
も「迷うなあ。そもそもこのお題だけみんなテンション違いませんか? ほかの3つのお題では、見た目のバランスがどうとか、この漢字のこの部分がぞわぞわするとか、冷静めな分析が多かったのに」
竹「たしかに。いきなり黒歴史を出してきたり、ふはははやらクククやら笑い始めたり。なにがみんなを駆り立てたのか」
も「よし、もういいや、苦渋の決断ということで、こうしましょう」

こうしました。
1位:(焼)、2位:(い)、3位:(川)、4位:(大)、5位:(の)。黒歴史を開陳する心意気を買いました。おめでとう、(焼)。そして、5人の健闘に拍手。パチパチパチ。

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